[愉快ながらも落ち着いて穏やか、真摯なる人間味、ルワンダやオーシャン]

スティーブン・ソダーバーグ監督、フランク・シナトラ主演『オーシャンと十一人の仲間』のリメイク版、ジョージ･クルーニー、マット・デイモン、ブラット・ピット、アンディ･ガルシアら、豪華なキャスティング陣が話題を呼んだ『オーシャンズ11』にて、負けず劣らず彩を放つ俳優、それがドン・チードルである。また、アメリカ人気連続ドラマ『ER緊急救急室』においては、ジョージ･クルーニーが第1から第5シーズン、ドン・チードルが第9シーズンに、それぞれ出演している。愉快ながらも落ち着いて穏やか、真摯なる人間味を放つ人物である。
1964年、アメリカのミズーリにて生まれる。本名はドナルド・フランク・チードル。アフリカ系アメリカ人の血筋、父は心理学教師、及び銀行支店長。3人兄弟である。高校卒業後からショービジネスへの道を歩み始める。地道に技術を磨いた後、1987年、23歳の頃から、ミュージッククリップのダンサー、舞台、映画、テレビドラマの端役などの活動を始める。外見が若かった為、1988年、24歳にて出演したテレビドラマでは、16歳の役柄を演じていた。1995年、31歳の頃から本格的に映画へ出演し始め、『青いドレスの女』、『ブギーナイツ』、トミー・リー・ジョーンズ共演『ボルケーノ』、ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ共演『天使のくれた時間』、ヒュー・ジャックマン共演『ソードフィッシュ』、ジャッキー･チェン、クリス･タッカー共演『ラッシュアワー2』など、軽快かつ重厚さを残した演技で、物語の脇固め役を好演する。同様に『オーシャンズ』シリーズのレギュラーメンバーとしても大きな存在感を示し、同作品の成功と共に俳優としての地盤を固める。その一方、シリアスな演技も秀逸であり、ショーン･ペン主演『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』、ルワンダ紛争を描く『ホテル・ルワンダ』、9.11同時多発テロ後の一個人を描くヒューマンドラマ、アダム・サンドラー共演『再会の街で』など、心を打つ誠実な人柄を演じ続ける。

結婚はしていないが、女優ブリジットと親密な交際が続いており、彼女との間に2人の子どもがいる。ポーカーは出場したワールドシリーズでは優勝候補を破る程の腕前。趣味はサックス演奏。真に誠実、善良な人柄であるらしく、「彼のような素晴らしい性格の持ち主は、本当に貴重なもの」とイギリスのメディアが語る。

ちなみに、『ホテル・ルワンダ』を描いたテリー・ジョージ監督は、当初から主人公のホテル支配人役にドン・チードルの起用を想定していたが、作品の質よりも商業的な成功を目論むスタジオ上層部がより知名度の高い俳優を要求、デンゼル・ワシントンやウィル・スミスの名前などが挙げられた。もちろん、デンゼルもウィルも素晴らしい俳優である。が、彼らの逞しき肉体的な存在感があっては、『ホテル・ルワンダ』を真摯な史実作品に仕上げる事が難しかろう。結果、テリー監督が自らの意志を通した形となったお陰で、人類の名作品がひとつ増えるに至る。さて――、得てして、人間における一個の命題は、自分たちの上に立つ者が偉大であるか、または偉大なほど馬鹿であるか、である。どちらの環境に属すにせよ、テリー監督のように、我が道を往く信念を持ち合わせていたいものだ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Don Cheadle (IMDb、英語）