ジェームズ・キャメロン(1954~)
ロバート・ゼメキス監督の大親友であり、多くの映画製作の仕事を共にしている映画監督、スティーブン・スピルバーグは、新3次元映像の技術が駆使されたSF作品、『アバター』を大絶賛した。同作品を描いた監督、それがジェームズ・キャメロンである。近年の映画技術の発展を巧みに取り入れながら、その新技術と共に独創性に溢れた物語を描く人物である。

1954年、カナダのオンタリオにて生まれる。本名はジェームズ・フランシス・キャメロン。父は電気技師、母は看護婦である。母シャーリーは趣味として絵画に打ち込んでおり、その影響から少年時代のジェームズも美術に興味と才能を示す。1969年、15歳、スタンリー・キューブリック監督のSF作品『2001年宇宙の旅』に激しい衝撃と感動を受け、宇宙船のプラモデルなどを使用した8ミリビデオカメラの映像を製作し始める。1972年、18歳、カリフォルニア州立大学へ進学後は映画熱から身を置き、英文学を修学。1974年、20歳、大学を中退、トラック運転手など幾つかの職を転々とする。1977年、23歳、ジョージ・ルーカス監督『スターウォーズ』を鑑賞し感激、再び映画熱を取り戻し、友人たちと共に映画製作を始める。翌1978年、24歳、短編映画が認められ、映像会社と契約。同社で映画製作に携わりながら技術を学んだ後、1982年、28歳、『殺人魚フライングキラー』にて監督を務める。批評家たちが同作品に散々な評価を下し、ジェームズは寝込んで熱を出す程であったが、1984年、30歳、奮起して製作したSF作品、アーノルド・シュワルツネッガー主演『ターミネーター』が大成功を収め、映画監督としての地位を確立する。続けてシガニー・ウィーバー主演『エイリアン2』、シュワルツネッガー主演『ターミネーター2』、『トゥルーライズ』といった作品を成功に導いた後、1997年、43歳、レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット主演、1912年に起きた史上最大の海難事故を基とした史実作品『タイタニック』を製作。同作品はアカデミー賞11部門を制覇した上、映画史上最大の興行収入を叩き出すという偉業を成し遂げる。そしてドキュメンタリー映画などを描いた後、2009年、55歳、シガニー・ウィーバー出演のSF作品『アバター』を製作。アカデミー賞は3部門の制覇に留まったものの、興行収入は自身『タイタニック』を塗り替えるに至る。2010年現在、2013年公開を目指し、木城ゆきと著、日本のSF漫画『銃夢』を原作とした映画作品『Battle Angel』を製作中。
5度の結婚暦があり、4度目のリンダとの間に1人、5度目のスージーとの間に3人の子どもがいる。スージーは『タイタニック』にてローズの孫娘役を演じた事から知り合いとなり、2000年、47歳にて結婚、現在に至る。3度目のキャスリン・ビグローは映画監督であり、第82回アカデミー賞ではイラク戦争をモチーフとした『ハートロッカー』がノミネート、『アバター』と競り合った末にアカデミー賞6部門を制覇している。多忙さから結婚生活が継続出来ていないが、前妻たちとは友好な関係を保っているとのこと。
ちなみに、2010年現在になって注目が集まっている3D映画――3次元映像技術を使用した映画であるが、実は技術そのものはそれ程目新しくはなく、1930年頃から存在する古典的な手法である。またあるいは、こちらも現在において注目が集まる電気自動車であるが、技術そのものは19世紀末にて既に開発がなされており、1900年のパリ万国博覧会においては何と実用化までされた新車種「ローナー・ポルシェ」が出品されている。が、技術進歩の時計は、音もなくピタリと止まってしまった。要するに、技術の発展とは、当代の社会の管理層がどの技術を先導、扇動するかに拠るという訳だ。
さて、ところで筆者の率直に感ずる所、3次元映像技術は映画界のジャンヌ・ダルクとはなるまい。ドストエフスキーの言葉を拝借するのであれば、我々は「何にでも慣れる」。擬似立体映像は一時的に我々に興味を覚えさせるであろうが、好奇心を十分に満足させるだけの力は無い。もし今後、より人類が求めるものがあるとすれば、それは総合的な「疑似体験技術」だ。視覚、聴覚のみならず、全体的感覚を刺激する擬似世界が、次世代のエンターテイメント業界を救うはずだ。が、無論、現実と虚構の境界線が曖昧になるにつれ、倫理面の課題が山積するであろう。その辺りは、おえらい管理者たちが壮絶なる議論を繰り広げてくれるであろうから、彼らにお任せしよう…
ムービーデータベース(IMDb、英語)James Cameron (IMDb、英語)