サミュエル・L・ジャクソン(1948~)
クエンティン・タランティーノ監督、ティム・ロス、ブルース・ウィリス、ユマ・サーマンらが出演する、時間のシャッフルされた短編繋ぎ形式、罵り文句「f×ck」が281回発音されているという記録的なサスペンス、ミステリー作品『パルプ・フィクション』にて、信仰に目覚めたマフィアの部下役を演ずる俳優、それがサミュエル・L・ジャクソンである。研ぎ澄まされた鋭い気配を醸し出し、重みを含む落ち着いた演技を披露せしめる人物だ。尚、同作品のサミュエルの日本語吹き替えを担当しているのは、『攻殻機動隊』バトゥ役、『メタルギアソリッド』のスネーク役でお馴染みの、大塚明夫。

1948年、アメリカのワシントンにて生まれる。本名はサミュエル・レロイ・ジャクソン。アフリカ系アメリカ人の家系、母エリザベスは工場技師、後に工業素材の仲介業者。父は出生時すでに離縁しており、エリザベスがサミュエルを育てる。1966年、18歳、アトランタのモアハウス大学にて演技に触れ、大きな憧れを抱く。その一方、翌1967年、19歳、アフリカ系アメリカ人の権利擁護を主張する公民権運動が高まりをみせており、サミュエルは次第に運動へ没頭。翌1968年、20歳、運動の先導者、マルティン・ルーサー・キング牧師が暗殺されたのを機に武力闘争の運動に参加し、逮捕。釈放後は再び大学に戻り、海洋学の勉学と並行して、舞台や小規模の映画などへ出演、本格的に演技の経験を積み始める。1972年、24歳、大学卒業後はニューヨークへ移住、映画の端役、ブロードウェイ、スタンダップ・コメディなどで技術を磨く。この時期に共に仕事をした映画人としては、モーガン・フリーマン、スパイク・リー監督、マーティン・スコセッシ監督らが挙げられる。1988年、40歳、エディ・マーフィ共演『星の王子ニューヨークへ行く』にて好演し注目を浴びると、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演『グッドフェローズ』、ハリソン・フォード主演『パトリオット・ゲーム』、スティーブン・スピルバーグ監督『ジュラシックパーク』、クエンティン・タランティーノ監督『パルプ・フィクション』、ブルース・ウィリス主演『ダイ・ハード3』などの大規模な作品に登場、印象を残す名演技で俳優としての地盤を固める。以後は、ジョージ・ルーカス監督『スターウォーズ』シリーズの評議員メイス・ウィンドゥ役、ダグ・リーマン監督『ジャンパー』などのSF作品、ケヴィン・スペイシー共演『交渉人』、M・ナイト・シャマラン監督、ブルース・ウィリス共演『アンブレイカブル』などのサスペンス、ミステリー作品、『トリプルX』、『S.W.A.T』などのアクション作品と、幅広い出演を続ける。また、ディズニーアニメ映画『Mr.インクレディブル』のフロゾン役、手塚治のSF漫画原作のアニメ映画『ATOM』のゾグ役、タランティーノ監督、ブラッド・ピット主演『イングロリアス・バスターズ』のナレーターなどで、声優としての活躍もある。
1980年、32歳、学生時代から交際していた女優リチャードと結婚、1人の子どもがいる。フロゾン役やメイス役など、自身の役柄がモチーフとなったアクション・フィギュアの収集が趣味。他、コミック、アニメ鑑賞も好む。ゴルフ、バスケットボール、フットボールのファン。特にゴルフは自らもその技術が高い。
ちなみに、元来『スターウォーズ』の大ファンでもあった彼は、ジョージ・ルーカス監督が同シリーズの新三部作を製作する事が決定した際、「報酬無しで構わないから役が欲しい」と本人に嘆願しに出向いたという。青、緑、赤に限られていたライトセーバーの色に紫を加えられたのも、熱心なサミュエルの説得に拠る。また余談ではあるが、サミュエルの低い擦れ気味の声質とは違うものの、彼の日本語吹き替えの多くは、先述の大塚明夫が担当をしている。
ムービーデータベース(IMDb、英語) Samuel L. Jackson (IMDb、英語)