[鮮烈な輝きと底知れぬ葛藤、3作品でこの世を去った青年、理由なきやエデン]

一時代前のテキサスの大地を舞台にした物語、エリザベス・テイラー主演『ジャイアンツ』は、壮大な舞台と緻密な人間模様を描くヒューマンドラマ傑作であるが、どうも邦題と同作品の印象が一致しない。『大いなるテキサス』、『遥かなるテキサス』――といったあたりが、邦題としては妥当だったのではなかろうか、と筆者は感ずる。……それはさて、同作品にて強烈な印象を残している俳優、それがジェームズ・ディーンである。若者らしい鮮烈な輝きと共に、若者らしい底知れぬ葛藤を表現する事の出来た、名俳優である。わずか3作品の出演で圧倒的な支持を受け、そして、そのわずか3作品が彼の俳優のキャリアのすべてとなってしまった。返す返す、残念な事である。
1931年、アメリカのインディアナにて生まれる。本名はジェームズ・バイロン・ディーン。父はジェームズ生誕時は農業を行っていたが、後に歯科医となる。1937年、6歳、サンタモニカへ移住。1940年、9歳、「自分の唯一の理解者」であった母が逝去。息子の成育に自信を持ちきれなかった父ウィントンは、彼を農場を経営している伯母たちの元で生活させる。伯母たちと共に生活を始めた彼はしばらく苦悩と共にあったが、牧師のディウィードと対話を重ねるうち、健やかな心を取り戻す。闘牛、カーレース、そして演劇というジェームズの興味は、この牧師から影響を受けたものだとされている。1946年、15歳、インディアナ高校へ進学、バスケットボール選手として活動する一方、演劇へ積極的に参加し始める。1949年、18歳、高校卒業後はサンタモニカ大学を経て、ＵＣＬＡ大学演劇科へ進学。独特の才能を示し、舞台やコマーシャルへの出演を重ねる。1951年、20歳、ＵＣＬＡ大学を中退、ニューヨークへ移住し、俳優として本格的な活動を始める。テレビ番組や映画の端役をこなした後、1955年、24歳、エリア･カザン監督のヒューマンドラマ傑作、『エデンの東』の主人公キャル役に抜擢。同作品におけるあまりに鮮やかな演技により、一気にスターダムを駆け上る。同年、続いてナタリー･ウッド共演『理由なき反抗』、エリザベス・テイラー共演『ジャイアンツ』への出演を果たす。後に、これら3作品は後にすべてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされる事となる。――と、悲劇は唐突に訪れた。『ジャイアンツ』撮影終了から1週間後、1955年9月30日午後5時59分、カリフォルニアの公道分岐点で交通事故を起こし、永眠する。

イタリア女優、ピア・アンジェリと親密な関係であった。先述の通り、闘牛、カーレースが趣味。愛車はシルバーのポルシェ550スパイダー。少年時代にビーグル犬を飼っている。埋葬地はジェームズの故郷マリオンからほど近い、フェアマウントの公園墓地。空港のあるインディアナポリスから北東100kmほどに位置しており、所要時間は2時間30分ほど。

ちなみに、墓には今でも献花が耐えず、加えて沢山のキスマークによって埋め尽くされている。更に、少しでもジェームズと共にいたいという熱狂的なファンが墓石を削り取って持ち去るので、墓は外側がぼこぼこである。献花はともかくとして、後者は頂けない。これはジェームズを侮辱するような行為に他ならぬ。ジェームズに限らず、彼らは時に、有名俳優、歌手の墓に大量のキスマークを浴びせかけ、必要ならば墓石を削り取って行く。これは筆者として実に不愉快だ。多くの輝きを残した死者には一層の敬意を持ち、厳粛に見送るべきである。偉大なる死者は決して、あなた方のお友達ではないのだ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
James Dean (IMDb、英語）