マリリン・モンロー(1926~1962)
1961年製作、ジョン・ヒューストン監督の『荒馬と女』は、良質のヒューマンドラマ作品である。しかしその一方、些か奇妙なる邂逅を経験した作品であると言え、主演のクラーク・ケーブルは撮影中に起きた馬の事故を引きずる形で、数ヵ月後に心臓発作により永眠。『赤い河』、『陽のあたる場所』などでお馴染みの名俳優、同作品に出演していたモンゴメリー・クリフトは、出演後から体調を崩し始め、4年後の1965年に永眠。そして、愛嬌と朗らかさ、そして艶やかな容姿や仕草で世界中を魅了したセクシーな大女優、マリリン・モンローもまた、この作品から数ヵ月後、36歳にて永眠した。彼女の逝去の原因は、未だに謎のままである。

1926年、アメリカのロサンゼルスにて生まれる。本名はノーマ・ジーン・モルテンセン。母は映画会社のフィルム編集者。父親は明らかにされていない。母モンロー・ベイカーの元夫か、あるいは出生当時にベイカーと同居をしていた男性と言われている。精神病を患っていたベイカーに代わり、ベイカーの同僚グレースが保護者となる。1933年、7歳、グレースの結婚により、孤児院へ出向き、その後、養子として各家庭をたらい回しにされる。少女時代もまた明確にされていないのだが、性的虐待やネグレクトなどの被害を伴う、非情な時間を送ったらしい。1942年、16歳、第二次世界大戦中に高校を中退、航空機部品の製造会社に就職する。1945年、18歳、終戦直前、工場で働いているモンローの姿が報道写真の一部を飾り、その愛らしい容姿に注目が集まる。この一事が契機となり、モデルとしてとしての活動を開始。翌1946年、19歳、20世紀フォックスのスクリーンテストに合格、女優としてのキャリアを踏み始めるが、しばらくは実力が認められず、ヌードモデルなどで何とか日銭を稼ぐ生活が続く。1951年、24歳、ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督のヒューマンドラマ傑作『イヴの総て』への出演で注目を博し、続けて『ナイアガラ』、『紳士は金髪がお好き』、『百万長者と結婚する方法』、『七年目の浮気』といったコミカル調のドラマへ出演、これらの見事な好演により、一気にスターダムを駆け上る。が、セックスシンボルに留まる自らの存在意義への疑問や、実生活上のややこしい関係性などが重なり、次第に精神を病み始める。1957年、30歳頃から精神病院へ通院する事が多くなり、睡眠薬を多量摂取する事件を数度起こす。結果、1962年、35歳、自殺により永眠する。――が、モンローの急死には謎めいた伏線が複雑に交差しており、ケネディ大統領との不倫関係、FBIによる通話記録の隠蔽、現場に残された数々の不審な点など、自殺に疑問を呈する様々な状況が明らかにされている。以上より、現在では自殺説よりも他殺説が有力視されている。尚、ケネディ大統領はモンロー逝去の翌年、1963年11月、暗殺によってこの世を去った。
1942年、16歳、近所の男友達、航空整備士のジムと結婚するも、4年後の1946年、20歳にて破局。1954年、28歳、元野球選手ジョーと結婚するも、8ヵ月後に破局。1956年、30歳、劇作家アーサーと結婚するも、1961年、35歳にて破局。フランク・シナトラやジョン・F・ケネディと恋仲にあったと言われている。銀幕での輝きとは裏腹に精神が不安定であり、お馴染みの精神学者ジークムント・フロイトの娘、アンナ・フロイトは、「境界性人格障害」の診断を下している。「とても弱々しく見えた」と、1954年、直に会見をした映画評論家の淀川長治は、後にそう語っている。金髪のイメージが強いが、地毛は褐色。
ちなみに、マリリンの特徴的なある歩き方、ヒップを大振りするセクシーな「モンローウォーク」であるが、これは親友の女優ジーン・カーメンによると、ハイヒールの片側の踵を6mm短く切り込み、その視覚効果を上げていたとの事である。また、モンローはジーンに、10代の頃に出産を経験した事を打ち明けているそうである。ただし、これらの話を実証付ける証拠は今のところ何も無いので、真偽のほどは不明である。また余談であるが、2010年現在、彼女を題材とした映画が3本企画されている。2011年公開予定、『マイ・ウィーク・ウィズ・マリリン』ではミシェル・ウィリアムズが、2012年公開予定の『愛犬マフが見た、マリリン・モンロー』(筆者意訳)ではアンジェリーナ・ジョリーが、『ブロンド』ではナオミ・ワッツが、それぞれマリリン・モンローを演ずる予定である。……が、『愛犬――』に関しては情報源が曖昧で、何よりアンジェリーナ本人がはっきり否定しているので、どうやら完全な偽情報のようだ。同作品ではマリリンの親友、フランク・シナトラ役にジョージ・クルーニーが抜擢されたとの報道もあったが、こちらも完全なデマらしい。困ったものだ。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Marilyn Monroe(IMDb、英語)