[渋くこもるような声、屈託なき明朗さと愛嬌と哀愁、銀幕のゴールデンボーイ]

ビリー・ワイルダー監督、『サンセット大通り』、『第十七捕虜収容所』、『麗しのサブリナ』といったドラマ傑作作品の主演俳優、それがウィリアム・ホールデンである。屈託のない明朗さと愛嬌と哀愁、渋くこもるような味のある声――彼の描く人物像は多くのファンたちから支持された。初出演作に因み、「ゴールデンボーイ」という愛称で親しまれた人物だ。
1918年、アメリカのイリノイにて生まれる。本名はウィリアム・フランクリン・ビードル、ジュニア。父は化学技師、母は教師である。少年時代は父の仕事に影響され細菌学者に憧れていたものの、次第に演劇への興味を抱く。1936年、18歳、大学進学後は演劇学校にて演技を学ぶと共に、地元ラジオ局の劇に参加する。1938年、20歳、舞台に端役として出演している際にハリウッド製作者の１人から見初められ、翌1939年、21歳、『ゴールデンボーイ』にて映画初出演を果たす。同作品における明るい演技で俳優として注目された彼は、続く『前科者』、『我等の町』にて好演し、人気を博し始める。1941年、23歳、第二次世界大戦が悪化。ウィリアムは陸軍航空隊に従軍、1945年、27歳の終戦まで戦争に参加した。終戦後は再び俳優業に戻り、ビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』、『第十七捕虜収容所』といった傑作作品に出演。同作品の成功と共に俳優としての確固たる地盤を築いた。以後、ワイルダー監督『麗しのサブリナ』、ジョン・フォード監督『騎兵隊』、早川雪洲共演『戦場にかける橋』、実話を元にした大戦直後の恋物語、最高の映画音楽と名高い『慕情』など、ヒューマンドラマ傑作への出演を続ける。後年は朗らかな愛嬌に哀愁も加えた演技を披露せしめ、1969年、51歳、最後の西部劇作品と呼ばれる『ワイルドパンチ』、1973年、55歳、クリント・イーストウッド監督『愛のそよ風』、1976年、58歳、シドニー・ルメット監督『ネットワーク』など、深みのある作品にて好演した。1981年、63歳、自宅で転倒事故を起こし、永眠する。

1941年、23歳、女優ブレンダと結婚、2人の子どもをもうけるも、30年後の1971年、53歳にて破局。その後は女優ステファニーと親密な関係になり、結婚はしなかったものの、生涯を共にした。不動産や株を取り扱う屈指の実業家。野生動物の保護活動に力を入れており、アフリカのケニアに1260エーカーの土地を所有。東京の明治神宮全体で約175エーカー、また「くまのプーさん」たちの住まいが100エーカーの森である事を鑑みれば、これは広大な大地である。後年は事業不振、交際関係、肺疾患などの影響からアルコール依存症を患っており、先述の転倒事故も酩酊が原因である。

ちなみに、1974年、56歳にて出演した『タワーリング・インフェルノ』は、様々なドラマが別々に進行する「グランドホテル方式」パニック物の草分けであり、ハリウッドらしい巨額の製作費に加え、ウィリアム・ホールデンの出演の他、ポール・ニューマンとスティーブ・マクイーンという二大俳優の共演で話題になった作品である。20世紀フォックスとワーナー・ブラザーズという大映画会社が「初共演」した作品としても有名で、「フォックス社代表俳優のポール」、「ワーナー社代表俳優のスティーブ」のどちらを先にクレジットさせるかで揉め合っていたなどというエピソードがある。さて、この難問はどう解決されたのか――実は、その解決法は少々呆気ない。



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William Holden (IMDb、英語）