[U.S.S.エンタープライズ号NCC-1701-D、宇宙の航海を支えた船員たち]

『スタートレック（宇宙大作戦）』の大成功から、ファン達は続編の製作を待ち望んだ。彼らは前作と同じ舞台、同じキャストらが演ずるシリーズを求めたが、無論、俳優たちは年齢を重ねており、新しい登場人物たちが必要であった。ジーン・ロッテンベリーは新しい登場人物を慎重に選び抜き、新しい彼らに合わせて新しい時代を描く事に決めた。こうして『スタートレック（宇宙大作戦）』から1世紀後を舞台にした『新スタートレック（Star Trek;The Next Generations、以下、TNG）』の幕が開けた。そして同作品は7年間に及ぶ大作シリーズとして大成功を収め、この輝かしい成果のお陰で更なる続編『スタートレック；ディープ・スペース・ナイン』、『スタートレック；ボイジャー』、『スタートレック；エンタープライズ』の製作が決定されるに至る。

2363年から宇宙探索の航海が始まったU.S.S.エンタープライズ号NCC-1701-Dには、以前の記事内にて取り上げたパトリック・スチュワート演ずるジャン＝リュック・ピカード艦長（大佐）の他、主たるメンバーとして7名の上級士官を挙げる事が出来る。尚、階級等は物語と共に変動するが、ここでは登場時におけるそれを記す。
ウィリアム・Ｔ・ライカー。副長（中佐）。演ずるはジョナサン・スコット・フレイクス。1952年、アメリカのペンシルバニア生まれ。父は英文学教授。高校時代から演劇を始め、大学進学後は本格的な活動を始める。テレビドラマや舞台でキャリアを重ねた後、『TNG』に抜擢、ライカー副長の役柄を演じきる。同シリーズ終了後も同作品の続編映画、続編シリーズの監督、製作などを務め、幾つかのエピソードには再びライカー副長としての出演をしている。浮気性の伊達男という役柄と違い、1988年、36歳にてジェニーと結婚、仲睦まじく生活を続けている。2人の子どもをもうけ、現在に至る。ちなみに、ライカー副長の日本語吹き替えは、傑作アクションゲーム『メタルギアソリッド』シリーズの主人公スネーク役や、傑作ＳＦアニメ『攻殻機動隊』のバトー役でお馴染みの大塚明夫が担当している。

データ。主任オペレーション、主任パイロット、第2副長（少佐）。陽電子頭脳を持ったアンドロイドである。演ずるはブレント・ジェイ・スピナー。1949年、アメリカのヒューストン生まれ。父は家具店経営者。高校で演劇を教えていた教師に刺激され俳優を目指すようになり、ヒューストン大学在学中に地元劇団にて活動を始める。卒業後はニューヨークへ移住、ブロードウェイの舞台やテレビドラマなどでキャリアを重ねる。『TNG』抜擢により俳優としての確固たる地盤を固め、以後、『スタートレック』シリーズに度々出演すると共に、『アイ・アム・サム』、『アビエイター』などのヒューマンドラマから『変身パワーズ』のようなコメディ作品まで、様々なジャンルの作品にて好演。ロリーと結婚、1人の子どもがいる。ちなみに、データ少佐は猫を飼っており、彼をとても可愛がっている。ある時などは彼をモチーフに詩を執筆し、これを朗読会で発表して皆を面食らわせた程。その内容はこちら。「”フィリス・カタス”　それがお前の正式な学名　四足歩行の動物　生まれながらに肉食　おまえの視覚、嗅覚、そして聴覚は　狩猟能力と防衛に非常に役に立つ　お前たちネコの、声にならないのどの振動は　コミュニケーション法として非常に興味深い　気まぐれという定説を覆すように　リズミカルに背中をなでると　振動で愛情を示す　アクロバットの才能には　そのしっぽは欠かせない　優れた平衡感覚　敏捷性もしっぽゆえ　動きの一助として　使われていないときには　しっぽは感情をあらわす道具として　使用される　おお　スポット　お前の複雑な行動様式に　よく発達した認識システムを想う　ひとの言語を解さず　スポットよ　意思は伝わらないが、　にもかかわらず、お前は　本当の大切な友人だ」。

ビバリー・クラッシャー。医療主任（中佐）。演ずるはチェリル・ゲイツ・マクファーデン。1949年、アメリカのオハイオ生まれ。ブランディス大学卒業後、パリへ移住し演劇の勉強に励む。『TNG』へ抜擢され、毅然とした女性ドクターを演じきる。シリーズ終了後はコメディドラマやＣＭなどで活躍。ジョーンと結婚、1人の子どもがいる。ちなみに、物語中において大きな存在感を示していた医療主任ビバリーであるが、シリーズ終了後の軌跡が不明瞭なキャラクターの１人であり、その後の顛末がほとんど描かれていない。

ウェスリー・クラッシャー。医療主任の息子。パイロット、機関技師（少尉）。演ずるはウィル・ウィトン。本名はリチャード・ウィリアム・ウィトン３世。1972年、アメリカのカリフォルニア生まれ。父は元ヒッピーの薬剤師。1981年、9歳からドラマ出演を果たし、1986年、14歳、『スタンド・バイ・ミー』で脚光を浴びる。『TNG』では製作者ジーン・ウェスリー・ロッテンベリーのミドルネームを受け継ぐウェスリー役を演じ、ジーンにとって思い入れのある役柄をしかと好演した。シリーズ終了後も俳優として多数の映画、テレビドラマに出演、声優としての仕事も多数こなしている。アンと結婚、2人の子どもがいる。ちなみに彼は少年、青年としてエンタープライズ号に関わる事になり、士官たちからは往々に子ども扱いされているのだが、ナノマイクロマシンによる生命体を偶然ながら創造してしまったり、エンタープライズ号船員全員が洗脳された際には1人で全員を救出したり、彼にとってラストシーンとなる場面では4次元の世界の旅人となり現実世界から解き放たれるなど、忘れた頃に超人的な活躍をせしめて我々を驚かせてくれる。

ジョーディ・ラ＝フォージ。機関部長（中尉）。演ずるはレヴァー・バートン。本名はレヴァーディス・ロバート・マーティン・バートン、ジュニア。1957年、西ドイツのランドストゥル生まれ。両親は西ドイツに駐屯していたアメリカ陸軍。両親が西ドイツ勤務の軍人、これはブルース・ウィリスと同様の生誕環境である。高校卒業後、南カルフォルニア大学演劇科にて勉学に励む。同大学卒業後はテレビドラマにて活躍。『TNG』抜擢により更なる地盤を固め、シリーズ終了後も俳優、声優として活躍、製作に携わる事もある。レヴァと結婚し、1人の子どもがいる。ちなみに、ジョーディ機関部長は先天性を伴う盲目の人物であるが、可視光線を電子的に認識するヴァイザーを装着し、生活に適応している。このVISOR（バイザー）とは、「Visual Instrument and Sensory Organ Replacement」」の頭文字を省略したもの。言わば、「視覚、及び知覚組織代替機器」。これは外部装置であるが、2372年からは眼球内臓型の改良版を使用している。

ディアナ・トロイ。カウンセラー（少佐）。ベタゾイド人と地求人のハーフである。演ずるはマリーナ・サーティス。1955年、イギリスのロンドン生まれ。父はギリシャ語の教師である。両親の反対を押し切り演劇学校へ通った後、舞台にて女優活動を始める。1986年、31歳にてアメリカへ移住、地道にキャリアを積む。『TNG』出演にてディアナ役を好演。シリーズ終了後も映画、テレビドラマ、声優などで活躍する。1992年、37歳にてマイケルと結婚。熱烈なサッカーファンである。ちなみに、ベタゾイド人とはアルファ宇宙域ベータゼット星系に居住するヒューマノイドであり、生まれながらに思考解読能力を持ち合わせている。更年期障害として性欲が増大する症状が生じる。結婚式は出席者全員が全裸になる。地求人によく似た種族であるが、その体質や文化スタイルはかなり独特である。

ウォーフ。保安部員（中尉）。戦闘種族クリンゴン人と地求人のハーフである。演ずるはマイケル・ドーン。1952年、アメリカのテキサス生まれ。パサデーナ州立大学にてラジオ、テレビ芸術を学び、卒業後はロックバンドを結成してミュージシャンを目指す。次第に俳優への道を歩み始め、1976年、24歳にて『ロッキー』のボディーガード役として出演、好評を得る。テレビドラマなどで経験を積み、その後『TNG』に抜擢、クリンゴン人を見事に演じきる。シリーズ終了後も俳優として活躍。深い味わいのある声質から、声優としての活躍もある。独身。ジョン・トラボルタのような空の男であり、クラシカルな航空機を5台所有、実際に運転も行っている。ちなみに、クリンゴン人ウォーフの肩には家系を示す、太いサッシュベルトが掛けられているが、これは自転車のチェーンで制作されている。ガーデシア人の額のマークがスプーンであったり、宇宙基地が鳥のエサやり場であったりと、『スタートレック』ではありふれた日常品が見事に宇宙の世界に昇華されている。

ナターシャ・ヤー。保安部長（大尉）。演ずるはデニス・クロスビー。1957年、アメリカのハリウッド生まれ。祖父がかの有名な歌手、名俳優のビング・クロスビーである。ショービジネス家庭に生まれた彼女は幼少時代から女優を目指し、やがてテレビドラマや舞台などにて活躍を始める。『TNG』1シリーズ目にて強い印象を残すも、演ずるヤー大尉の必要性が薄いと感じ、自らレギュラーを降板。その後は映画、テレビドラマ、舞台にて活躍する。2度の結婚暦があり、2人目ケンとの間に１人の子どもがいる。ちなみに、ヤー大尉はアンドロイドのデータ少佐と肉体関係を持った唯一のキャラクターである。

前作のシリーズが大人気を博した為に、『新スタートレック』という新たな航海の始まりは決して円滑では無かった。製作陣も出演者たちも、1シリーズ目は手探り状態であったと語っている。ところが人物像や舞台設定が完全に整い出すや否や、物語が円滑に動き出し、最終的には超が付くほどのＳＦヒューマンドラマ傑作としてし上がるに至った。ジャン＝リュック・ピカード艦長が物語中においてしばしば行う制服の裾を正す仕草、これは「Jean-Kuc Maneuver《ジャン＝リュック式動作》」などと評されており、不屈と頑固を意味しているが――まさに、『新スタートレック』は『スタートレック』の明るさと温かさに加え、人類における不屈の精神と力強い信念を描き出している。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
<a href=" http://en.wikipedia.org/wiki/Star_trek" target="_blank">Star Trek (Wikipedia、英語）</a>