ジーン・ロッテンベリーとスタートレック(1921~)
8月19日――SF傑作ドラマ『スタートレック』の生みの親、ジーン・ロッテンベリーの誕生日が近い。以前、筆者の愛するSF作品『スタートレック』に関する記事が素っ気無く終わってしまっていた事を惜しみ、今一度、補完する形で新たに記事をしたためる事にした。横道に逸れる形となるが、ジーン・ロッデンベリー、及び5シリーズ毎の主要登場人物たちを、6回に渡って紹介する。
パトリック・スチュワート、レナード・ニモイ、ウィリアム・シャトナーといった俳優たちが出演した『スタートレック』とは、一体どのようなドラマであろう。40年以上も世界中から愛され続けている同作品に対して、既に何らかの断片的なイメージを持っている者は多い。大雑把な表現を許して頂きたいが、スタートレックはいわば、SF版のサザエさんである。舞台は磯野家ではなく、宇宙船エンタープライズ号。この船を拠点にして、SF、恋愛、コメディ、ヒューマンドラマ、サスペンス、ミステリーなど、あらゆるジャンルのエピソードが咲き誇る。続シリーズからは、エンタープライズ号の他に、宇宙基地ディープ・スペース・ナインや、宇宙船ボイジャー号などが舞台となる。
『スタートレック』の原点は、ジーン・ロッデンベリーという人物に始まる。彼は1921年、アメリカのテキサス生まれ。本名はユージーン・ウェスリー・ロッテンベリー。父は警察官である。1927年、6歳にてロサンゼルスへ移住。UCLA大学卒業後、第二次世界大戦にてB-29爆撃機のパイロットに従事する。1945年、24歳、終戦後はパンアメリカン航空のパイロットとして働くが、フライト中以外の空き時間が多く、ここで暇つぶしを兼ねて小説の執筆を始める。『スタートレック』の構想が湧きあがったのはこの頃である。次第に執筆への情熱が高じ始め、1949年、28歳にてパイロットを退職、ロサンゼルス市警に勤務しながら脚本家を目指し、映像会社への売り込みを始める。1955年、34歳、テレビドラマの脚本家としての初仕事を果たすと、その後は着実にキャリアを重ねる。1964年、43歳にて『スタートレック』の企画を売り込むが、諸事情により却下される。それから2年後の1966年、45歳、ようやくNBC社が『スタートレック』シリーズの製作を受け入れ、製作が開始。同作品の大成功と共に、製作、脚本家としてスターダムを駆け上るに至る。映画シリーズ、及び『新スタートレック』への製作に関わる中、1991年、70歳にて永眠。1997年、世界初となる宇宙葬によって、彼の遺骨は宇宙へ立ち返った。2005年、85歳にて永眠した機関部長スコット役のジェームズ・ドゥーアンの遺骨また、ジーンの埋葬された宇宙へと旅立っている。
スタートレックは主5本のTVドラマシリーズ、11本の映画で構成されている。舞台となる年代は2063~2379年であるが、タイムスリップなどで古代や20世紀に向かう事もある。それぞれ題名がややこしいので日本人の言語感覚は混乱してしまいがちであるが、ドラマ版は『スタートレック(旧題:宇宙大作戦)』、『新スタートレック』、『スタートレック:ディープスペースナイン』、『スタートレック:ヴォイジャー』、『スタートレック:エンタープライズ』、映画版は『スタートレックⅠ』~『スタートレックⅥ』、『ジェネレーションズ』、『ファーストコンタクト』、『スタートレック 叛乱』、『ネメシス』、『スタートレック』と続く。映画については、数字の付随する6作品が『スタートレック(宇宙大作戦)』の映画版、文字題の付随する映画版3作品が『新スタートレック』の映画版、最新作は『スタートレック(宇宙大作戦)』の十数年前を描く形となっている。ドラマ版は順に、3シーズン、7シーズン、7シーズン、7シーズン、4シーズンのボリュームがあり、エピソード総数は800話を越えている。
1969年、48歳、同シリーズでチャペル看護婦を演じていた女優メイベルと結婚。挙式は日本の明治神宮で執り行っている。1人息子がいる。メイベルは続シリーズ『新スタートレック』にて主要登場人物のカウンセラー、ディアナ・トロイの母ラクサナ役としても活躍しており、「スタートレックのファーストレディ」などと評される事がある。メイベルもまた2008年、76歳にて永眠し、宇宙へと旅立った。愛すべき作品に関わった人々が次第にこの世に別れを告げて行くのはやりきれない思いがあるが、これこそが人類の旅というものであろう。
ちなみに、『スタートレック』の原点であるパイロット版を視聴したテレビ局側の上層部は、当時においてあまりに斬新であったこの企画に疑いの目を向け、黒人や異性人の登場によって抗議が殺到するのではないかという懸念を示した。しかし物語はご存知の通り、世界中の人びとから愛される事となった。「そんな抗議はひとつもなかったよ」と、ジーンは誇らしげに語っている。
ムービーデータベース(IMDb、英語)<a href=" http://en.wikipedia.org/wiki/Star_trek" target="_blank">Star Trek (Wikipedia、英語)</a>