ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ(1961~)
映画音楽の第一人者、ジョン・ウィリアムズが賛美する音楽家、菅野よう子は、日本のSF傑作アニメ『攻殻機動隊』を始めとする幾多もの楽曲を手掛けている。この『攻殻機動隊』にてバトゥ役を演ずるは、轟くような声質の声優、大塚明夫である。大塚はアクションゲーム傑作『メタルギア・ソリッド』のスネーク役としても有名であるが、同作品内の楽曲を手掛けている音楽家、それがハリー・グレッグソン=ウィリアムズである。緊張感と潔さ溢れた力強い楽曲を描き、物語に大いなる躍動感を与える人物だ。

1961年、イギリスのイングランドにて生まれる。弟がいる。少年時代から音楽に親しみ、1983年、22歳、大学卒業後は弟ルパートと共に音楽学校の教師の職に就く一方、同じくルパートと共にギルドホール音楽演劇学校に所属、自らの才能に磨きを掛ける。1988年、27歳、映画音楽の第一人者の1人、ハンス・ジマーが運営するリモート・コントロール・プロダクションに所属。これより本格的に映画音楽家としての活動を始める。1996年、35歳、マイケル・ベイ監督、ニコラス・ケイジ、ショーン・コネリー、エド・ハリス出演のアクション傑作『ザ・ロック』にて、ハンス・ジマーらと共にテーマ曲を作曲、同作品の成功と共に脚光を浴びる。続けてトニー・スコット監督、ウィル・スミス主演『エネミー・オブ・アメリカ』、マイケル・ベイ監督、ブルース・ウィリス、スティーブ・ブシェミら出演『アルマゲドン』といった傑作映画のテーマ曲を見事に描き、映画音楽家としての地位を確立する。以後、『マイ・ボディガード』、『キングダム・オブ・ヘブン』、ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット共演『スパイ・ゲーム』、キーラ・ナイトレイ主演『ドミノ』、デンゼル・ワシントン主演『デジャヴ』、デンゼル、ジョン・トラボルタ出演『サブウェイ123』など、トニー・スコット監督との仕事を中心に活躍する他、C.S.ルイス原作のファンタジー小説原作の『ナルニア国物語』、ヒュー・ジャックマン主演、アメリカンコミック原作のヒーロアクション『ウルヴァリン;X-MEN ZERO』、ドリームワークス社製作、マイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアス、エディ・マーフィーらが声優を演ずるファンタジック・コメディのCGアニメ映画『シュレック』シリーズなどの音楽製作を担当、オーケストラにエレクトロニック・ミュージックを加えた、重さと広がりのある荘厳な音楽を描き続けている。
2度の結婚暦がある。1人目のカレンとの間に1人、2人目のエリンとの間に2人の子どもがいる。世界中のゲームファンからは『メタルギアソリッド』の作曲家として名高く、同作品を描いた小島秀夫監督は、ハリーが作曲を務める『リプレイスメント・キラー』を鑑賞して音楽に感動、彼に作曲を頼み込んだ。同年に製作されたブルース・ウィリス主演のSF傑作『アルマゲドン』の著名な楽曲の方を感動する対象として選ばなかった辺りが、小島監督のこだわりと言えようか。
ちなみに、『メタルギアソリッド』シリーズは敵に見つからぬよう潜入行動を行うアクションゲームであり、通常は風や動物、人工物などが奏でる自然音が背景音となっているが、敵に見つかった際、または敵が何かに気づいた際などにはふっと自然な形で、緊張感の漂う音楽に切り替わるようになっている。これはプレイヤーの行動によって音楽の切り替えを自然処理するクロスフェードという技術とのこと。将来的にはゲームのみならず、心拍数や血液酵素量などがスキャンされ、その情報によって自動的に生活環境が切り替わる――などといった技術に応用出来るのではあるまいか。未来は、楽しい。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Harry Gregson-Williams (IMDb、英語)