[ゆるやかなる落ち着き、きらりと滲む強き人間性、ショーシャンクやミスティック]

ジャック・ブラックを自らの劇団に迎え入れ、後にジャック出演の『ボブ★ロバーツ』を描いた監督、及び俳優、それがティム・ロビンスである。ゆるやかなる落ち着き、加えてきらりと滲む人間性を兼ね備え、ヒューマンドラマにしっとり馴染む人物だ。
1958年、アメリカのカリフォルニアにて生まれる。本名はティモシー・フランシス・ロビンス。父は出版社幹部、ナイトクラブ経営者、及び音楽家、母は女優。2人の姉と弟がいる。少年時代、父のフォークグループに参加し、音楽に親しむ。同時に演劇への興味を抱き始め、1970年、12歳、劇場に所属し地道に演技の勉学に励む。1973年、15歳、高校進学後も引き続き積極的に演劇に携わり、1976年、18歳よりニューヨーク州立大学を経てカルフォルニア大学へ進学、両校にて演劇と共に映画製作の技術を学ぶ。1981年、23歳、ロサンゼルスにて劇団「アクターズ・ギャング」を立ち上げ、ジャック・ブラックらと共に活躍する。1984年、26歳、『恋人ゲーム』にて映画初出演を果たした後はしばらく地道な役でキャリアを積み、1988年、30歳、『さよならゲーム』にて好演、同作品により注目される。1992年、34歳、ハリウッド映画界の舞台裏をモチーフとした『ザ・プレイヤー』に主演、続けて『ボブ★ロバーツ』では監督、主演を兼任、1995年、37歳、死刑制度をテーマにした『デッドマン・ウォーキング』を監督、これらの作品の成功により映画監督、俳優としての確固たる地盤を固める。以後、フランク・ダラボン監督、モーガン・フリーマン共演『ショーシャンクの空に』、ゲイリー・シニーズ共演『ミッション・トゥ・マーズ』、クリント・イーストウッド監督、ショーン・ペン共演『ミスティック・リバー』などといったヒューマンドラマ傑作にて好演を続ける他、マイク・マイヤーズ監督、主演『オースティン・パワーズ；ゴールドメンバー』、ジャック・ブラックら出演『ザ・シンプソンズ』の声優、ジャック共演『テネイシャスD　運命のピックを捜せ』、スティーブ・カレル、ベン・スティラーら出演『俺たちニュースキャスター』といったコメディ作品、またスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ共演『宇宙戦争』、トム・ハンクス製作『エンバー　失われた光の物語』といったSF、ファンタジー作品など、幅広く質の高い演技を披露せしめている。

1988年、30歳、『さよならゲーム』共演の女優のスーザンと親密なるパートナーとなり、2人の子どもをもうけた。正式な結婚をせずパートナー関係を続けていたが、21年後の2009年、破局した。死刑制度、イラク戦争に強い反対の姿勢を示し、デモ行進の参加や意見表明など、積極的に自らの主張を表現している。野球、ホッケーを愛し、ニューヨーク・メッツ、ニューヨーク・レンジャーズの熱烈なファンである。

ちなみに、『宇宙戦争』ではトム・クルーズ、ダコタ・ファニング演ずる親子を一時的に匿う家主として登場するティム・ロビンスであるが、この家に侵入した火星人が珍しそうに自転車の車輪を回すシーンがある。SF小説の古典として名高いH.G.ウェルズの原作『宇宙戦争』によると、人類よりもずっと高度な技術を開発している火星人が、実はまだ車輪という技術を開発していないからだそうである。言われてみればなるほど、車輪は自然界に全く存在しない概念だと言われており、車輪機能を持つ動植物は皆無。車輪は人間が一から築き上げた概念、技術なのだ。実は、人間は驚くべき発想力を持ち合わせているのかもしれぬ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Tim Robbins(IMDb、英語）