ソフィア・ローレン(1934~)
世界的高級ブランドアルマーニの最高責任者、ジョルジオ・アルマーニの仕事や日常風景を追うドキュメンタリー作品、『アルマーニ』には、ベルナルド・ベルトルッチ監督、アーノルド・シュワルツネッガーらの姿が登場している。そうした登場者の中で、一際彩を放っている女優、それがソフィア・ローレンである。容姿、挙措共にとびきりの艶やかさが漲っており、かつ、確かなる演技力によって印象深い存在感を示す人物だ。

1934年、イタリアのローマにて生まれる。本名はソフィア・ヴィレーニ・シコローネ。父は建築技師、母はピアニスト、女優。妹がいる。両親は結婚しておらず、ソフィアの出生時直後に離縁。妹と共に母方の祖母に引き取られ、ナポリ近郊のボッツォーリの生活を始める。1939年、5歳、第二次世界大戦の勃発。戦況は次第に激化し、ボッツォーリは連合軍による集中的な爆撃地域と化す。ナポリに避難しながら厳しい生活を乗り越え、1945年、11歳、終戦。その後は祖母の開いた小さな酒場にて、妹と共に経営を手伝うと共に、歌やダンスを披露して客たちを楽しませる。可愛らしさも相まって、彼女たちはアメリカ兵に大きな人気を博す。1948年、14歳、ナポリの美人コンテストに出場、決勝戦まで勝ち残ったのを契機に女優への道を志し、演劇学校に通い始める。1951年、17歳、映画の端役にて初出演を果たすと、著名な映画プロデューサー、カルロ・ポンティに見初められ、本格的な女優活動を始める。同年、ネロ皇帝時代のローマを舞台にした文芸劇、デボラ・カー、エリザベス・テイラーら共演のハリウッド作品『クォ・ヴァディス』に出演。小さな役ではあったが、同作品の成功と共に注目される。続けて多数の作品への出演にてキャリアを積み、『島の女』、『楡の木陰の欲望』、ケーリー・グラント共演『月夜の出来事』、『黒蘭』といったロマンティックなドラマ作品にて好演、映画女優としての地盤を固める。以後はアメリカ、ヨーロッパの双方で活躍を続け、『西部に賭ける女』、『ローマ帝国の滅亡』、『ひまわり』、『ラ・マンチャの男』、ロブ・マーシャル監督、ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルスら共演『Nine』など、多彩なドラマ作品に出演している。1967年、33歳、マーロン・ブランド共演の『伯爵夫人』への出演を果たしているが、同作品は偉大なる喜劇王、チャーリー・チャップリン監督にして初のカラー映画作品であり、また映画監督最後の作品でもある。
先述の映画プロデューサー、カルロと不倫関係を経て、1972年、38歳にて結婚。2人の子どもがおり、彼の永眠まで生涯を共にした。ナポリのサッカーチーム、SSCナポリの熱烈なファン。由来はよく分からぬが、少女時代のニックネームはToothpick《つまようじ》であったとの事。
ちなみに、第二次世界大戦時にイタリアを導いた独裁政権ファシスト党の長、ヴェニト・ムッソリーニとは、間接的ながら親族の関係にある。ヴェネトの3男、ジャズピアニストのロマーノが、ソフィア・ローレンの妹、アンナ・マリア・シコローネと結婚をしているのだ。尚、元モデル、元外科医、現在はイタリアの現職議員であるアレッサンドラ・ムッソリーニは、この妹アンナの娘である。アレッサンドラの政治的立場は、とびきりの右寄り――民族主義、国粋主義の傾向であり、社会行動党の党首として活躍をしている。戦後半世紀でファシスト気質を復活させる辺り、流石はイタリア流である。もっとも、右であろうが左であろうが、同胞たちを正しい道に導いてくれるというのであれば、信ずる価値はある。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Sophia Loren (IMDb、英語)