マーティン・スコセッシ(1942~)
ロバート・デ・ニーロ、ジョディー・フォスター主演の『タクシードライバー』は、社会から疎外された一個人における肉迫した精神描写が秀逸な作品である。同作品の監督、それがマーティン・スコセッシだ。作品によっては全く素直な描き方をしているものもあるので一概には言えぬ所であるが、彼は生々しい狂気、苦悩、葛藤を見事に映像化する人物である。
1942年、アメリカのニューヨークにて生まれる。本名はマーティン・マルクアントニオ・スコセッシ。両親はニューヨークのファッション地区、ガーメントセンターの洋裁店員。イタリア系、シチリア移民である。持病の喘息により外出して遊ぶのを控えざるを得なかった息子の為に、両親は足しげくマーティン少年を映画館へ連れて行った。これにより大の映画ファンとなった彼は、フランスのジャン・ルノワール監督、イギリスのマイケル・パウエル監督、日本の溝口健二監督といった、現実的な描写に優れた監督たちの影響を受ける。中でもドキュメンタリータッチのリアルな演出を取り入れた、ネオレアリズモ式のイタリア人監督、ロベルト・ロッセリーニの作品に大きな感銘を受ける。1958年、16歳、カーディナル・ヘイズ高校へ進学し、カトリック教司祭になる道を歩み始めるも、次第に映画に没頭し映画監督への興味を抱く。1960年、18歳、ニューヨーク大学の映画学部へ進学した後、1963年、21歳、在学中に短編映画を製作、好評を博する。この頃に深い影響を受けていた監督として、今村昌平、小林正樹の名が挙げられる。大学卒業後は映画監督業に専念、1970年、28歳の頃からフランシス・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーブン・スピルバーグら著名監督との親交を深める。1976年、34歳、上記『タクシードライバー』により高い評価を受けると、『レイジング・ブル』、『グッド・フェローズ』などの優れたドラマ作品を次々に製作し、映画監督としての地盤を固める。主演はロバート・デ・ニーロの他、『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『アビエイター』、『ディパーテッド』など、レオナルド・ディカプリオを起用する事も多い。マイケル・ジャクソンの『BAD』など、ミュージックビデオも数多く手掛けている。
5度の結婚暦があり、マリー、ジュリア、ヘレンとの間にそれぞれ1人ずつ、合計3人の子どもがいる。彼の作品には、ヒッチッコック監督のようにマーティン本人のカメオ出演が必ず用意されている。
ちなみに、マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロ主演という組み合わせによって製作された映画作品は、今のところ例外なく大成功を収めている。『タクシー・ドライバー』、『ニューヨーク、ニューヨーク』、『レイジング・ブル』、『グッド・フェローズ』、『ケープ・ファイアー』、『カジノ』――といった具合だ。尚、ウィル・スミス、レニー・ゼルヴィガー、アンジョリーナ・ジョリー、ロバート・デ・ニーロら豪華声優陣が話題となったCGアニメ映画『シャークテイル』には、マーティンも声優として作品に参加をしている。
ムービーデータベース(IMDb、英語)<a href=" http://www.imdb.com/name/nm0000217/" target="_blank">Martin Scorseser (IMDb、英語)</a>