ジョディー・フォスター(1962~)
サスペンス劇には物語の幕を開ける小道具がある。アルフレッド・ヒッチコック監督はそれを「マクガフィン」と読んだ。謎めいた書類であったり、盗品のダイヤモンドであったりとその様式は様々であるが、同監督の『バルカン超特急』においては「私が見て話し合ったはずの人間を、誰もが見ていないし知らないと言っている」という状況こそが、そのマクガフィンと言えよう。2006年の『フライトプラン』はまさに同作品のマクガフィンを参考にして製作されたサスペンス作品であり、その主演を演じたのがジョディー・フォスターである。毅然たる躍動感のある、そして物語と程よく調和する演技を披露せしめる名女優だ。
1962年、アメリカのロサンゼルスにて生まれる。本名はアリシア・クリスチャン・フォスター。父はアメリカ空軍の中佐であるが、生前に離婚し、母の元で育つ。2人の姉、1人の兄がおり、女優名「ジョディー」はこの兄妹の間で使われている愛称である。1965年、3歳、子役として活動していた兄の撮影現場にてスカウト、CMへの出演後、彼女も子役としての活動を始める。少女時代から才能を発揮した彼女は国内外において着実にキャリアを重ね、1972年、10歳にて映画初出演を果たし、1976年、14歳、ロバート・デ・ニーロと共演した『タクシードライバー』では数々の映画賞を受賞、女優としての地盤を固める。一方で女優活動と共に学業にも励み、1994年、18歳、高校卒業後、イェール大学へ進学。彼女による文豪トニ・モスリンの研究論文は成績優秀賞《Magna cum laude》に選出された。以後も『告発の行方』、『羊たちの沈黙』、『コンタクト』、『ブライブワン』などの傑作作品における好演を続け、テレビドラマなどを含まれば出演作品は50作品を越えている。2010年、49歳、メル・ギブソン主演のコメディ作品『ザ・ビーバー』の出演と共に、同作品の監督を務めている。作品公開は今年度中との事。
1998年、36歳にて、2001年、39歳にて、それぞれ息子を出産しているが、父親の存在は未公開、結婚はしていない。2007年、46歳、一部メディアによって女性の映画プロデューサー、シドニーとの恋愛関係が取り沙汰され、2008年、47歳にて同関係の破局が報じられたが、このどちらもソースの怪しいゴシップ報道であり、レズビアンの真偽は不明である。子役時代にフランスへ行く機会が多かった事からフランス語が堪能であり、出演作のフランス語吹き替えはほぼ全て彼女自身が行っている。他、イタリア語、ドイツ語も堪能である。
ちなみに、1981年、ジョディー19歳、イェール大学1年生の頃、彼女はあるショッキングな事件に遭遇している。彼女が13歳にて出演した『タクシードライバー』は狂気的な心理描写の見事な名作であるが、この映画内の少女ジョディーを深く愛してしまった男が物語の主人公と同じく気を狂わせ、何とレーガン大統領暗殺未遂事件を引き起こしてしまった。男は犯行前からジョディーに何度もコンタクトを取ろうと試みており、犯行はただ彼女を喜ばせる為に行ったのだと自供、裁判席に立った際は証言席にいる彼女に向かって「俺の物にしてやるからな!」と発叫し、また犯行後は彼女を殺して自分も死ぬつもりだったと証言した。まったく、どちらが映画なのか分かったものではない。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Jodie Foster (IMDb、英語)