アル・パチーノ(1940~)
現時点で007シリーズの最新作である『007 慰めの報酬』にて、悪役ドミニクの取引相手とあるメドラーノ将軍を演じているのはホアキン・コシコであるが、実はこの役に意欲を示していた別の俳優がいる。それが、アル・パチーノである。実際に製作陣からは彼の起用を進める企画が現実的なものとなっていたが、費用やプロットなどの諸事情からこの素晴らしいアイデアは立ち消えになってしまった。ダンディズムと親しみを兼ね備えた、エネルギッシュなこの俳優が登場していれば、あの作品はまた違った輝きを放っていたのかもしれない。
1940年、アメリカのニューヨークにて生まれる。本名はアルフレッド・ジェームズ・パチーノ。両親はイタリア移民であり、父は保険営業員とレストラン「パチーノ・ラウンジ」のオーナーである。1942年、2歳、両親離婚後は母に引き取られ、貧しい幼少時代を過ごす。1956年、16歳、舞台芸術系の高校に進学するも、翌1957年、17歳に中退し、家計と演劇学校入学の為に雑多なアルバイトをこなし始める。自転車便、映画使用人、郵便配達、バスボーイ、低賃金のエキストラなどで地道に資金を貯めた後、1966年、26歳、リー・ストラスバーグの名門演劇学校への入学を果たす。1969年、29歳、『ナタリーの朝』で映画初出演を果たすと、1972年、31歳、マフィア作品の大傑作『ゴッド・ファーザー』のコルレオーネ家三男、マイケルに抜擢され大好評を博し、この演技により一気に実力が認められるに至る。以後、『ゴッド・ファーザー』シリーズのようなクリミナル作品から、『セルピコ』、『セント・オブ・ウーマン』、『シモーヌ』などのヒューマンドラマ作品、『ヴェニスの商人』や幾つかの舞台におけるシェイクスピア作品など、様々なジャンルで大きな活躍を示している。2007年、67歳、『オーシャンズ13』のバンク役に類するコミカルな役を演じさせても、その実力は見事の一言である。
結婚はしていないが、3人の娘がいる。1989年、49歳、演劇教師ジュリーとの間に1人の娘を、2001年、61歳、『ゴッド・ファーザー』で共演した女優ビバリーとの間に双子の娘をもうけている。初代ジェームズ・ボンドであるショーン・コネリーと同様に9歳から煙草を吸い始め、13歳になると酒も始めているが、ドラッグには一度も手をつけた事が無い。
ちなみに、ブルース・ウィリスは『ゴッド・ファーザー』におけるアルの演技に多大な影響を受けたと語っている。言われてみれば確かにウィリスの演技は、どこかマイケル・コルレオーネを彷彿とさせるものがあろう。同様に、アルの演技は同業の俳優たちにとってただならぬ存在感があり、彼らの多くに並々ならぬ影響を与えている。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Al Pacino (IMDb、英語)