[厳格、荘厳、そして軽妙、徹頭徹尾とことん演ずるイタリア系]

フランシス・コッポラ監督『ゴッド・ファーザーPARTⅡ』にて、ドン・マイケル役を演じているのはアル・パチーノである。この作品の中ではドン・マイケルの父親の若き時代が描かれるが、このヴィト・コルレオーネ青年を演じた俳優、それがロバート・デ・ニーロである。役柄を徹底的に演じ込むこの俳優は、画面の中で隙のない存在感を醸し出す。
1943年、アメリカのニューヨークにて生まれる。本名はロバート・マリオ・デ・ニーロ、ジュニア。父は画家であり、祖父母がアメリカに渡ったイタリア移民である。1946年、3歳、両親の離婚により母親に引き取られる。少年時代、リトル・イタリー地区のギャング団とつるみ始めるが、1953年、10歳、学校で開かれた劇『オズの魔法使い』にて臆病ライオン役を演じ、演劇という行為に只ならぬ興味を抱くようになる。1959年、16歳、高校を中退し、本格的に俳優の道を目指す。リー・ストラスバーグの演劇学校などで徹底的に演技の研究を始め経験を積み、1963年、20歳にて映画初出演を果たす。彼の実力はすぐにも認められ、次々に映画へ出演。1970年、27歳、『ゴッド・ファーザー』のオーディションを受け落選するも、コッポラ監督に見初められ、1974年、31歳、続編となる『ゴッド・ファーザーPARTⅡ』に出演、この役にて圧倒的な演技力を見せつける。1976年、33歳、『タクシードライバー』でも狂気と現実の狭間に揺れる難解な役柄を、これ以上なく見事に演じきる。俳優としての地盤を築いた彼は、以後、『ディア・ハンター』、『レイジングブル』、『アンタッチャブル』、『レナードの朝』、『グッドシェパード』などのシリアスなヒューマンドラマ作品から、『アナライズ・ミー』、『ショウタイム』などのコミカルな作品、『未来世紀ブラジル』、『スターダスト』などのＳＦファンタジー作品まで、あらゆるジャンルへの出演を続けている。ドリームワークス製作『シャークテイル』ではウィル・スミスやアンジェリーナ・ジョリーらと共に声優を演じ、『アバウト・ア・ボーイ』、『レント』などには製作側として携わっている。2010年7月現在、4つの映画作品への出演、または製作への参加の企画が進行中である。

1976年、33歳、女優ダイアンと結婚し1人の子どもをもうけるも、12年後の1988年、45歳にて離婚。1997年、54歳、グレイスと結婚し1人の子どもをもうけ、現在に至る。幾つかのレストランを経営。礼を欠くマスコミの風潮を嫌っており、メディアへ登場する機会をほとんどもうけていない。

ちなみに、彼は「ちなみに」という逸話の多すぎる俳優である。『レイジング・ブル』では役柄に応じて撮影中に体重を20キロ増減させ、『アンタッチャブル』では前髪を抜き、『タクシードライバー』では実際にタクシードライバーとしてニューヨークで仕事をし、そして『ゴッド・ファーザー』ではシチリア島に移住、イタリア語とマーロン・ブランドのしゃがれ声を完璧にマスターした――など、伝説的な逸話に事欠かぬ。一体、何者ぞ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Robert De Niro (IMDb、英語）