アダム・サンドラー(1966~)
軽妙で温順なラブ・コメディ傑作『ウェディング・シンガー』、『50回目のファーストキス』にてヒロイン役を演じているのはどちらもドリュー・バリモアである。同じく、先述の作品にてドリューの相手役を演じている、登場しただけで視聴者に笑いの準備をさせてしまう何とも愉快なユダヤ人俳優、それがアダム・サンドラーである。彼の出演する、または製作や監督で携わる作品は、ほぼ例外なく軽妙で温順なコメディであり、我々をただただ笑わせてくれる。笑劇に対する独特な風土が根付き過ぎている為かあまり日本には浸透していないように見受けるが、アメリカではこのコメディアンを知らぬ人はいなかろう。

1966年、アメリカのニューヨークに生まれる。本名はアダム・リチャード・サンドラー。父は電気技師。兄と2人の姉がいる。彼らはユダヤ家系である。時にユダヤ系という人びとの卓越したユーモアの言語感覚には脱帽してしまう事があるが、アダムもまさにその1人と言え、既に幼少時代からつくづく面白い男であった。高校生になると自らもこの長点を認知し、遺憾なくこの才能が発揮されるようになる。1983年、17歳、ボストンのコメディクラブでスタンダップ・コメディの初舞台を踏むと、ニューヨーク大学進学後も学内やクラブなどで積極的に笑いの舞台に立ち続ける。1988年、22歳、大学卒業後、彼の舞台を絶賛したコメディアンのデニス・ミラーの強烈な後押しによって長寿コメディテレビ番組『サタデーナイトライブ(SNL)』へ進出。舞台やテレビ番組、また端役として映画にも出演しながらキャリアを重ねた後、1991年、25歳からはSNLのレギュラーに抜擢。以後5年間この仕事を続けた彼はお茶の間の大人気者として大成功を遂げると共に、ここで培った映像作家や歌手としての実力も磨き上げる事となる。と、その一方、1994年、28歳にて主演した『ハードロック・ハイジャック』では演技の冴えたセンスによって俳優としても人気を博し、『プロゴルファー・ギル』、『ウェディングシンガー』、『ウォーターボーイ』などに出演を続ける。1999年、33歳からはハッピー・マディソンという自らの制作会社を設立させ、出演のみならず、製作、脚本、プロデューサーといった多彩な関わり方をしながら、『リトル★ニッキー』、『もしも昨日が選べたら』、『ロンゲスト・ヤード』、『ベッドタイムストーリー』などのコメディ傑作品を連発している。
2003年、37歳、女優のジャッキーと結婚している。2人の娘がいる。ドリューとの共演俳優としては珍しく恋仲に発展していないが、これはアダムの明朗で堅実的な人柄に拠るものであろう。アジア人に特別なユーモアを感じているのか、日本を含めた、的を射たアジアジョークがしばしば見られる。
さて……ところで、昨年度に公開したアダム主演作品『Funny People』がさしたる理由もなく日本未公開である上、レンタル化の動きもさっぱり見られないのは至極残念である。彼の最新作を待望している諸賢は今のところ輸入版を鑑賞するより他に手段が無い。日本の映画業界はあまり彼の事が好きではないのかしらん?
ムービーデータベース(IMDb、英語)Adam Sandler (IMDb、英語)