[群を抜き彩を放つ個性的な存在感、パイレーツも帽子屋も]

重厚かつ軽快、独特の存在感を醸し出し続ける名俳優、ゲイリー・オールドマンの演技に大きな影響を受けた人物のうちの1人に、ジョニー・デップがいる。物語がどんなにお粗末な内容でも彼が出演していれば鑑賞に値する作品になってしまうのだから、その演技の存在感は抜群の彩を放っていると言えよう。
1963年、アメリカのケンタッキーにて生まれる。本名はジョン・クリスファー・デップ2世。父は土木技師、母はウェイトレス。アイルランド、ドイツ、そして曾祖母に先住民、チェロキー族の血筋を持つ。1人の兄、2人の姉がいる。1970年、7歳にて、20回以上の転居を繰り返した後、ようやくフロリダに移住。家庭環境は荒れていたようで、ジョニー自身も1975年、12歳から飲酒を始め、1977年、14歳から麻薬に手を出し、1978年、15歳にて両親が離婚、同時期から自傷行為を繰り返すなど陰惨たる少年時代を送る。後者に至っては、未だに7、8個の消えぬ傷が残っている。1979年、16歳、友人の事故死を目の当たりにし人生を見つめ直す。同年、高校を中退し、バンドを組んでミュージシャンとしての本格的な活動を始める。1983年、20歳、バンドマンとして成功していたジョニーであるが、共通の女友達ロリを介してニコラス・ケイジと知り合い、彼から俳優への道を勧められた事で俳優業への興味を抱く。1984年、21歳、ホラー映画『エルム街の悪夢』にて初出演を果たすと、戦争傑作『プラトーン』、テレビドラマ『21ジャンプストリート』で注目を浴び、ティム・バートン監督『シザーハンズ』の好演にて大きな人気を博する。以後、『エド・ウッド』、『スリーピー・ホロウ』、『チャーリーとチョコレート工場』、『スウィーニートッド フリート街の悪魔の理容師』、『アリス・イン・ワンダーランド』とティム・バートン監督作品の常連として大活躍をし続けると同時に、『ショコラ』、『ネバーランド』などのヒューマンドラマ作品、『シークレット・ウィンドウ』、『ナインズゲート』、『パブリック・エネミーズ』などのミステリー、サスペンス作品、娯楽要素の強いエンターテイメント作品『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなど、幅広い演技を披露している。また、先住民をテーマにした『ブレイブ』では、監督、脚本、主演を務めている。

1983年、20歳にて、ニコラス・ケイジの元恋人である先述のロリと結婚するも、3年後の1986年、26歳にて破局。1998年、39歳、『ナインズゲート』で共演した女優ヴァネッサと交際を始め、2人の子どもをもうけた。ヴァネッサと正式な結婚はしていないが、生涯のパートナーを誓い合っている状態である。青年期は粗暴な面も垣間見られたものの、ヴァネッサと家庭を持った後は一変、人当たりが良く気さくな良き夫、良き父として穏やかな生活を送っている。母、子ども2人、他数個のタトゥーを掘り込んでいる。生活内では柄の広い黒縁眼鏡、ソフト帽を愛用している。

ちなみに、ジョニーは『シザーハンズ』で共演したウィノナ・ライダーと親密な交際をしていた頃、腕に「Winona Forever《ウィノナとの愛を永遠に》」というタトゥーを刻み込んだ。この恋愛は終幕を迎えた為、ジョニーはこのタトゥーから「na」を抜き、「Wino Forever《アル中くんよ、永遠にさようなら》」という文章に仕立て直している。また余談であるが、ウィノナはキャリアも資産もあるハリウッド女優にも関わらず、2001年、彼女が30歳の頃、ロサンゼルスのブティックで5500ドル相当の商品を万引きして逮捕されるという馬鹿げた事件を起こしている。彼女がジョニーのような温かな家庭を築ける事を願うばかりだ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Johnny Depp(IMDb、英語）