早すぎるスターの死
昨年初夏、我々が失ったキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソン。ポップアイコンと化した伝説的人物の死は、世界中に衝撃を与え、たくさんの人々が悲しみに暮れました。彼の急死は同時に、彼がどれだけ偉大であったかということを人々に再確認させたものです。
THIS IS ITについて
THIS IS ITは、2009年に公開されたマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画です。名前の由来は、生前ロンドンのO2アリーナで行う予定であったコンサートの名前から付けられています。
その後2010年3月6日まで全50公演が予定されていましたが、残念ながらその夢のステージが実現することはありませんでした。
このドキュメンタリー映画は、死の直前まで行われていたそのコンサートのリハーサル映像を編集して、ソニー・ピクチャーズが6000万ドルかけて製作したものです。
監督は「ダーティ・ダンシング」の振付や、「ハイスクール・ミュージカル」の監督でおなじみのケニー・オルテガです。
予定より2日繰り上げられて、昨年10月28日から全世界で一斉に上映開始となり、あまりの人気ぶりに、世界各地で上映期間の延長が決定。日本でも12月中旬から下旬にかけてアンコール上映が行われました。
アメリカでは興行収入2300万ドルで初登場1位を記録するほか、日本でもそれまでの記録を塗り替える興行成績と観客動員数を記録しました。それは、早すぎるスターの死に、どれだけたくさんの人々が悲しみ、関心を寄せているかということを如実に表す数字でした。
待望のDVDとブルーレイが発売
今月27日、ソニー・ピクチャーズより発売されたTHIS IS ITのDVDとブルーレイには、劇場では公開されなかった未公開映像も含まれています。
ファン待望の映像ということで、日本での初日の売上だけでも16億円を突破。この記録は、過去のトップ記録を持っていたジブリの「崖の上のポニョ」の初日売り上げ5.9億円を軽く上回る前代未聞の数字となりました。
THIS IS ITには、コンサートツアーのリハーサルを行うマイケルのほかに、知られざるバックステージも撮らえられています。
未公開映像はDVDよりもブルーレイの方が30分長く、監督のケニー・オルテガは、実現しなかったコンサートのために、どんな企画が練られていたのかということをこの映画は表していると話しています。
監督ケニー・オルテガのインタビュー
「今回DVDとブルーレイに追加された未公開映像は、マイケルがどれだけ自分のビジネスや楽しいと思えることに精力的に取り組んでいたかを語っている。それから、我々の撮影にも、あらゆる面で全面的に協力してくれた。」
「たくさんの優秀なダンサーにも恵まれたよ。このコンサートのために集まったダンサーの数は5700人だったからね。」
彼は説明を続けます。
「彼らは常に現場に控えていた。カメラを常に回しているわけじゃなかったけど、これだけは確かだ。バックステージで衣装やら振り付けの準備する必要がなければ、彼らはずっとステージの前に立ってマイケルを観ていただろう。」
コンサートの準備のために出演者やスタッフが慌ただしく動くシーンは映画でも確認することができます。監督は、実現まであと一歩だったと説明します。
「実際、マイケルが亡くなって、ステイプルズ・センターへ向かった日、コンサートのための仕掛けや機材はセミトレーラーの中にあったんだ。」
「本当に、綿密に計画されていたんだよ。」
と、監督は語ります。
マイケルの公式サイトの発表では、1982年のアルバム「スリラー」は、世界で1億枚を超えるセールスを記録しました。監督は、この偉大な記録の祝福を、このツアーで行う予定だったと言います。
「マイケルはこれを、彼が言う『4D』でやりたがっていた。舞台に高解像度の3Dスクリーンがあったから、3Dでスリラーのショートフィルムを新しく撮り直してそこに映すことにしたんだ。それから、ブロードウェーでライオンキングを手がけたマイケル・カリーの人形とシルク・ドゥ・ソレイユのショーも織りまぜてね。天井に仕掛けをしたり、座席間の通路を人形が通ったりして、舞台はマイケルを中心にフルキャストだよ。」
監督は続いて、彼の音楽や関心を寄せていた物事にも触れます。マイケルは彼と、自分が関心を寄せていた環境問題について話したがっていたようです。
「マイケルは回復不可能になるかもしれない地球環境の問題について、深い関心を持っていた。子どもたちのことや、孫のことを考えて気を揉んでいたし、夜も眠れなくなっていた。」
マイケルのクリエイティブ・パートナーとして、監督は「兄弟の愛」を分かち合ったと言います。そして、マイケルが「驚嘆すべき人間」であり、「私たち全員に、数え切れないたくさんのことを残してくれた」と感じるのだそうです。
「彼と一緒にこのインタビューに答えられないなんて耐え難いよ。だけど、彼が僕たちに残してくれたことを考えると、この気持ちを抑えるのも難しくない。責任があるんだ。彼の音楽、アイディア、芸術、それと彼の心、愛、人道的努力、すべてに対して。」
監督はさらに、マイケルの急死さえなければ、このコンサートがどんなものになっていたかということを、映画からうかがい知ることができると言います。
「僕が思うに、このDVDは本当に、細かな部分までコンサートがどうなるはずだったかを示しているんだ。オープニングの素晴らしいアニメーションに、ラストの締め方、衣装…挙げ切れないよ。」
「ビジネスだけじゃなく、彼が感じていた喜びにも触れることができる。それから彼の愛すべき協力的な精神もね。」
マイケルが残したもの
一方で、スターにつきまとうゴシップニュースもあとを絶ちません。担当医の処置をめぐる詳しい死因の追求、残された子どもたち、彼が残した財産などです。
その度に登場するマイケルの家族の名前は、おそらく彼のファンでなければ誰が誰なのかわからないのではないでしょうか?芸能ニュースを伝えるデーブ・スペクターの顔を見ながら、「ラトーヤ・ジャクソンって結局マイケルの何?」と思った経験、あなたにはありませんか?
ジャクソン一家の家系図
マイケルは、ジョゼフ・ジャクソンさんとキャサリンさんの間に生まれた六男で、マイケル・ジョセフ・ジャクソンと言います。
彼にはデビー・ロウさんとの間に、プリンス・マイケル君とパリスちゃんという2人の子どもがいます。また彼らの弟に、代理母によって誕生したプリンス・マイケル2世君もいます。彼らの親権も、マスコミ報道の的となっていました。
3人の子供以上に複雑なのが、マイケル自身の兄妹です。マイケルが兄弟でジャクソン5を結成していたのは有名ですが、マイケルの兄妹は、7男3女の総勢10人です。
長男から順番に、ジャッキー、ティト、ジャーメイン、マーロン、その双子で死産となったブランドン、マイケル、ブランディ、一方女の子は長女から順にリビー、ラトーヤ、そして歌手として著名な末娘ジャネットです。
ジャクソン5は、長男ジャッキー、次男ティト、三男ジャーメイン、四男マーロン、そしてマイケルで結成されていました。また、父ジョセフさんにはこの他にも隠し子がいて、兄妹関係がさらにややこしくなっています。
ラトーヤさんが有名なのは、1991年に出版した著書で、父親から姉リビーとともに性的虐待を受けていたと発表した経由があるからです。虐待なのか、躾だったのかの議論に決着はついていませんが、父親は躾に厳しかったとマイケル本人も語っており、浮気の事実も相俟って、彼は何かと、家族から孤立しやすい人物となっています。
父親に関する一部報道では、マイケルの残された子どもたちのプロデューサーとなり、デビューさせようとしているとして、家族から猛反対を受けたと言われていました。
また、2人の子供の母親、デビー・ロウさんが親権を取り戻そうと申請しているという件に関しては、マイケルは遺言で彼の母キャサリンさんへと親権譲渡を希望しているとも言われていました。結局親権はキャサリンさんに渡り、デビー・ロウさんは養育権を得る形で決着しています。
スターが残した偉大な功績。その傍らで、骨肉の争いが繰り広げられるとは、なんとも皮肉です。
Jackson's "This Is It' drops on DVD with extrasマイケル・ジャクソン THIS IS IT - ソニー・ピクチャーズ公式サイト