映画『ポテチ』は伊坂幸太郎×中村義洋×斎藤和義の最強トリオ

2012年4月7日に仙台で先行上映、そして5月12日に全国で公開される映画『ポテチ』。原作は伊坂幸太郎、監督は『ゴールデンスランバー』の中村義洋、音楽は斎藤和義が担当する。伊坂×中村×斎藤、この3人は過去にも『フィッシュストーリー』、『ゴールデンスランバー』で作品に関わっており、2作品とも映画ファンに強い印象を残す結果となった。


（画像はAmazonより）

『ポテチ』は、2007年に発表された短編小説。上映予定時間も68分と、通常の映画の半分の長さだ。伊坂作品には、前半に散りばめられた謎が、後半に徐々に明らかになっていき、最後まで結末がわからないというスリリングな展開が存在する。今回は68分ということで、その特徴的な展開を創り出すために、短い時間でどのようなトリックが施されているのか、非常に興味深い。


監督の中村義洋は、2007年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で初めて伊坂作品の監督を務めた。この作品は、伊坂本人も映画化が難しいだろうと考えていたもの。それを見事に映像化し、結末に込められた感動を見事に再現してみせた。原作を読んだ時の感動と、映画を鑑賞した後の感動が一致する作品は、非常に稀だ。原作の解釈は監督次第だが、伊坂作品を同じ感動で映像化できるのは、中村義洋をおいて他に居ないだろう。それは『フィッシュストーリー』、『ゴールデンスランバー』を通じて、偶然ではなく必然であることを証明しているからだ。


（画像はAmazonより）

伊坂と斎藤の関係は、2007年に遡る。伊坂が書き下ろした短編小説『アイネクライネ』を題材にして、斎藤が“ベリーベリーストロング～アイネクライネ～”を作り、コラボレーションを通じて親交が始まった。その後も、対談を基にした書籍『伊坂幸太郎×斎藤和義　絆のはなし』を発売したり、『フィッシュストーリー』のテーマ曲“FISH STORY”の制作及びプロデュース、『ゴールデンスランバー』の音楽を担当するなど、年々その関係性は深まっている。伊坂はもともと斎藤のファンであったという逸話は有名だ。

伊坂の小説は、宮城県仙台市を舞台にすることが多い。伊坂本人も仙台在住である。2003年から2006年まで4年続けて直木賞候補になっており、読者のみならず評論家の評価も高い、実力派の作家だ。2004年に吉川英治文学新人賞を受賞した『アヒルと鴨のコインロッカー』、そして2008年に本屋大賞と山本周五郎賞を受賞した『ゴールデンスランバー』は、最後のどんでん返しにより読者の感動を誘う、伊坂節とも言うべき展開の妙が楽しめる。この2作品は、前述したように映画化が非常に難しいものであったが、中村義洋が見事に映像化した。伊坂作品独特の展開は、監督により解釈が分かれるもので、映画化に伴い同じ鮮度の感動を創り出すことが難しいことも、もちろんある。同じ感動を演出する要素として、伊坂×中村×斎藤の最強トリオの存在は、誰が欠けても成立しない、お互いがお互いを高め合う必要不可欠な3ピースなのだ。

（松本　良太）



映画『ポテチ』オフィシャルサイト