40年の歳月を経てよみがえる
2011年7月に惜しくも他界した、中村とうよう。彼が若かりし頃、現在のミュージック・マガジンの前身である『ニュー・ミュージック・マガジン』で執筆していたCDレビューが「今月のレコード」。100点満点での点数評価で、添えられた文章は彼しか書けない言葉の連続だ。話し言葉に非常に近く、感情の起伏もあり非常にわかりやすい。辛辣な評価も厭わなかった彼のレビューは、音楽に対する愛情の裏返しであったに違いない。
(画像はAmazonより)
『中村とうよう 今月のレコード』には、1969年から79年までのCDレビュー、合計842本が掲載されている。ロックが目まぐるしく進化していた時代に、現在では名盤となっているCDをオン・タイムで感じて生まれた言葉は、2012年に生きる我々にとっては宝箱のような存在。中村とうようの文章で名盤を振り返る贅沢は、どんな贈り物よりもうれしい至福のプレゼントだ。
棘のある言葉は、信頼の証
亡くなる直前まで、「とうようズトーク」で自らの考えを発信してきた中村とうよう。彼の言葉に嘘はない、そう感じていた読者も多かったはず。クレームを恐れない厳しい批評が、彼に対する信頼の表れだった。40年前の彼の文章が、現代に蘇ったことに乾杯したい気分だ。
(松本 良太)
ミュージック・マガジン 中村とうよう 今月のレコード