FineNews Today
2024年06月17日(月)
 FineNews Today

【ライヴ・レポート】畠山美由紀@福岡イムズホール

新製品・新サービス
IT
フード
ファッション・美容
スポーツ・エンタメ
セミナー・イベント
出版情報
新着ニュース30件






























【ライヴ・レポート】畠山美由紀@福岡イムズホール

このエントリーをはてなブックマークに追加
2012年2月5日

当日は小雨が降り、真冬の厳しい寒さで道行く人も暖かい服装に身を包んでいる。イムズホールに集まった人々も例外ではない。会場は椅子が用意されており、開始10分前の時点で満席状態。入口付近から後方にかけて、壁に沿うように立ち見の人が並び始めた。

18:00、ライヴ・スタート。ギターの小池龍平、ドラムの栗原務、ピアノの中島ノブユキが先に登場。しばらくして、主役の畠山美由紀がステージに姿を見せる。温かい拍手で迎えられ、1曲目の“その町の名前は”から演奏を開始した。今日の畠山のヴォーカルはいつもと変わらず安定感があり、その安定感はライヴが進むにつれて安心感に変化していくことは容易に想像できた。続いて“風の吹くまま”へとスムーズに移行していく。2曲目が終了したところで、メンバー紹介。栗原を紹介するときに、“その町の名前は”の作詞がおおはた雄一、“風の吹くまま”の作曲が栗原務であることを紹介した。彼女のMCは、会場の雰囲気を察知して対応する柔軟性がある。雰囲気が固い時は、時折冗談を交えて笑いを誘い、雰囲気を締めるところは声のトーンとヴォリュームを抑えて真面目に語る。前半は冗談を交え、彼女らしい男勝りの豪快ともとれる笑い声が会場内に響き渡っていた。

畠山美由紀


2011年12月に発売されたアルバム『わが美しき故郷よ』に収録されている、同タイトルの詩の朗読が始まると、会場からはすすり泣く音が聞こえてきた。この詩は、気仙沼出身である彼女の故郷の思い出と、震災の経験から生まれてきたであろう思いが、7分半という長さで綴られている。「叫ぶ - でも どこに? どこに叫んでいいのか分からない」という言葉は、震災を経験した人でないと実感できないことなのかもしれない。人間関係などといった人為的なことではなく、自然という何も語らず意思も存在しない相手では、怒りや悲しみが行き場を失ってしまう。被災地以外の人がこの言葉を頭では理解しても、実際の重圧や苦しみを体感することは難しい。それでも被災地から遠いこの福岡ですすり泣く声が聞こえるということは、人一倍被災地に思いを寄せることができる人、あるいは福岡に住む東北出身者が会場に居たということだろう。

畠山美由紀


詩の朗読そして同タイトル曲の演奏後、ある曲が始まると一瞬にして会場の雰囲気が明るくなった。それは、誰もが知っている名曲中の名曲、“Over The Rainbow”だった。これまで息を吐き出すような優しい表現だったヴォーカルが、生命力を感じるように躍動し、それを補佐するバンド・サウンドも少し激しくなる。声量に強弱をつけるヴォーカルの表現は、音源ではなかなか確認しにくい部分。彼女の確かな実力を感じるために、ライヴに足を運ぶ理由としては十分だ。先ほどの詩の朗読により、会場を包んだ言葉にならない思い、それを打開するために彼女自身が持つ全ての実力を披露した、そう思えてならなかった。
後半、畠山がステージ袖に下がっていく時間があった。「最後の曲だったのかな」、そう思った観客は多かったはず。しかしバンド・メンバーは残っている。しばらくして、畠山のいない3人で演奏が始まった。ヴォーカルは小池が担当。小池は自身のバンド、Hands of Creationやbonito名義でもヴォーカルを務めている。彼独特の温もりを感じる声で、畠山とは違った雰囲気を作り出していた。1曲演奏した後、畠山がゴージャスな白のドレス姿で再び登場。袖へ下がった理由を視覚で理解した観客から、大きな拍手で迎えられた。

畠山美由紀


MCで震災当日のこと、被災地へ赴いた際のことを語り始めた畠山。震災当日は東京のスタジオに居て、家に帰れず知人宅に泊まったそうだ。被災地へ赴く際も、直接的な支援にはなりにくい音楽という職業の性質上、行くまではやはり怖かったと話していた。そんな音楽でも、誰もが知っているスタンダード曲を歌うことで、通じ合えると語る彼女の声のヴォリュームは小さい。その小ささは、真実を伝える上で観客の心の内側に染みいるふさわしい音量だった。

そのスタンダード曲から、“What A Wonderful World”を披露。この曲では、それまで完全に黒子に徹していたドラムが、息を吹き返したように激しくなった。その激しさに連動するように、ヴォーカル、ギター、ピアノが呼応する。4者が一枚岩となって押し寄せる怒涛の攻めは、曲そのものを明るく照らす太陽のような存在。ドラムの特徴を生かしたダイナミックなバンド・サウンドは、力強い印象を残していた。そして同じく、誰もが知るスタンダード・ナンバーで、アンコール最後の曲となった“ふるさと”は、畠山が座っていた観客に向かって「立ってみんなで歌いましょう」という提案が。全員立った後、大合唱が始まった。観客の全員が自分の〈ふるさと〉を思い浮かべながら、会場は幸福感で満たされていった。

震災を経験し、故郷が姿を変えてしまうほどの被害を受けた、彼女の悲しみは計り知れない。しかし詩の朗読で会場からすすり泣く声が聞こえても、朗読している彼女自身は凛とした声だった。あの空間で、誰よりも泣きたいのは彼女自身、そう考えるのが普通だ。だが彼女は自分から震災のことを語り、涙を見せるどころか悲しい表情は終始見せなかった。そして自らの表現で、会場にいた全員に深い印象を残すことにも成功したのだ。彼女のヴォーカルにおける表現力は、どんな逆境においても一筋の光となる、それを証明してみせた。会場に居た観客は、その生き証人だ。

(松本 良太)

外部リンク

畠山美由紀 オフィシャルサイト
Amazon.co.jp : 畠山美由紀 に関連する商品
  • レコード音源を直接デジタル化できるポータブルプレーヤーがGEENEEから(2月28日)
  • アルミフレームがクールなBluetoothポータブルスピーカーがJVCから(2月27日)
  • スマホの音楽も再生できるBluetooth対応CDラジオが東芝から(2月26日)
  • 持ち運びにも便利なスリムタイプのBluetoothスピーカーがエレコムから(2月19日)
  • 個性的なフォルムのBluetoothスピーカー『SPARK』がJBLから(2月17日)
  • Yahoo!ブックマーク  Googleブックマーク  はてなブックマーク  POOKMARKに登録  livedoorClip  del.icio.us  newsing  FC2  Technorati  ニフティクリップ  iza  Choix  Flog  Buzzurl  Twitter  GoogleBuzz
    -->
    記事検索
    アクセスランキング トップ10










    特集
    お問い合わせ