[適度な陰気臭さとすかした軽妙さ、古今東西パロディアン、キルやパルプ]

1972年のイタリア映画『地獄のバスターズ』を基にした戦争劇、ブラット･ピット、ダイアン・クルーガー出演、『イングロリアス・バスターズ』には、当初、出演者としてエディ・マーフィ、アダム･サンドラー、アーノルド・シュワルツェネッガー、シルヴェスター・スタローン、ブルース・ウィリスといった名前が挙がっていたらしい。コメディからアクションまで、あまりに個性派揃いの名俳優たちで、監督が如何なる作品を描こうとしていたのかはまったくの謎だ。同作品の監督、それがクエンティン・タランティーノである。自ら映画狂、シネフィルであることを公言している通り、古今東西の映画のパロディアンとして優れた演出を施し、適度な陰気臭さとすかした軽妙さによって独自の小気味良い作品を描く人物だ。
1963年、アメリカのテネシーにて生まれる。本名はクエンティン・ジェローマ・タランティーノ。父はイタリア系の俳優、音楽家、母はアイルランド系、及び先住民チェロキー系の看護婦である。ただしクエンティンの出生前に父親は既に離縁しており、当時16歳であった母コニーが彼を育てる。コニーの映画好きに影響される形で、幼少時代から映画に没頭。1977年、14歳、学内劇の脚本を初執筆し才能を示す。1979年、16歳、高校中退後に劇団へ参加、製作や演技の技術を磨く。1985年、22歳、レンタルビデオ店の店員となり、ますます映画へ没頭すると共に、地道に映画の脚本の執筆に励む。1987年、24歳より脚本家としての活動を始め、1992年、29歳、『レザボア・ドックス』にて初監督を果たす。1994年、31歳、ブルース・ウィリス、サミュエル・Ｌ・ジャクソン、ユマ・サーマン、ジョン・トラボルタらが出演する『パルプ・フィクション』を製作、同作品の大成功と共に一気にスターダムを駆け上る。以後はユマ・サーマン、ルーシー・リュー出演、日本風味の溢れた復讐劇、『キル・ビル』のような独自性とパロディに富むような作品の監督ほか、ロバート・ロドリゲス監督『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のように製作、脚本に関わったり、アダム・サンドラー主演『リトル・ニッキー』や人形劇『マペットのオズの魔法使い』のように俳優として出演する機会も多い。現在、脚本家としては2014年の公開に向け、『キル・ビル3』の構想を企画中。

生涯初めて心酔した映画監督は、アル・パチーノ主演『スカーフェイス』、トム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル』などでお馴染みのブライアン・デ・パルマ。尊敬するアジア人監督は『レッドクリフ』のジョン・ウー、『仁義なき戦い』の深沢欣次、東宝映画の石井輝夫、など。レンタルビデオ店員時代に浴びるように映画鑑賞を行っており、ハリウッドの古典名作は勿論のこと、日本アニメ、映画、音楽にも造形が深い。

ちなみに、『イングロリアス・バスターズ』におけるダイアン・クルーガーの日本語吹き替えを担当しているのは、『攻殻機動隊』の草薙素子役でお馴染みの声優、田中敦子。彼女はダイアン他、ニコール・キッドマン、ケイト・ベッキンセール、ユマ・サーマン、ジョディー・フォスター、ケイト・ブランシェット、ティア・レオーニ、ジュリア・ロバーツ、キャサリン・ゼタ＝ジョーンズといった、強さや規律正しさを含んだ役柄を演ずる名女優の日本語吹き替えを担当している。



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Quentin Tarantino (IMDb、英語）