[ただ可愛い少女から偉大な演技者へ、豊かなる機微、クレオやジャイアン]

オーソン・ウェルズが俳優として好演している文学作品『ジェーン・エア』にて、少女ヘレン役を演じている女優、それがエリザベス・テイラーである。12歳から子役女優のスターとして活躍し始めたエリザベスだが、多くの批評家からは「ただ可愛いだけ」という感想を示されていた。それから数年後、彼女は名実共に認められる、偉大な大女優へと成長した。才能溢るる豊かなる機微の表現により、作品に重厚さと鮮やかさを与える人物である。
1932年、イギリスのロンドンにて生まれる。本名はエリザベス・ローズモンド・テイラー。両親はアメリカ人、父は美術商、母は舞台女優。兄がいる。1935年、3歳、母の勧めによりバレエ学校に通い始める。1939年、7歳、第二次世界大戦の勃発を契機に、避難の意味を兼ね、アメリカ合衆国へ移住。著名な舞台芸術コラムニストであったホッパーと親交のあった両親を通じ、エリザベスが彼に見初められ、1942年、10歳、端役として映画初出演を果たす。同時期、ちょうど子役女優を探していたＭＧＭ社の目に止まり、『名犬ラシー　家路』に抜擢、本格的なキャリアを歩み始める。『緑園の天使』、『スイングの少女』、『若草物語』といったヒューマンドラマ作品の少女役として活躍、技術を磨いた後、1950年、18歳、ヴィンセント・ミネリ監督、スペンサー・トレイシー共演の傑作ドラマ作品『花嫁の父』にて立派なレディ役を好演、同作品の成長に伴い、名女優としての地位を確立する。『花嫁の父』の続編となる『可愛い配当』、モンゴメリー･クリフト共演『陽のあたる場所』でも好評価を得た後、作品はモノクロからカラーへ移行。以後、『雨の朝巴里に死す』、『愛情の花咲く樹』、『熱いトタン屋根の猫』、『去年の夏 突然に』、ジェームズ・ディーン共演『ジャイアンツ』、『予期せぬ出来事』、『別離』といったヒューマン作品、『じゃじゃ馬ならし』、『青い鳥』などの文学作品、『クレオパトラ』のような史実作品まで、幅広いドラマ名作品への出演を続ける。『愛情の花咲く樹』、『熱いトタン屋根の猫』、『去年の夏 突然に』では3年連続アカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、1960年、28歳、『バタフィールド8』、1966年、34歳、『バージニア・ウルフなんかこわくない』にて、同賞を受賞している。1980年、48歳の頃から女優としての活動はそれなりに控え、装飾品ビジネスや慈善活動などへ積極的に参加をしている。2000年、68歳、英国王室から大英帝国勲章、ダイムの称号を受ける。

8度もの結婚暦がある。2度目に2人、3度目に1人、5度目に1人の子どもをもうけている。5度目、6度目はどちらも『クレオパトラ』にて共演した俳優リチャード・バートンであったが、2回目となる結婚生活も1975年から1976年の1年間で破局した。現在は独身。エイズ撲滅運動の慈善活動家。21世紀最高のエンターテイナーの1人、マイケル・ジャクソンとは親友同士の間柄であり、マイケル逝去の報道を心から悲しんだ。

ちなみに、エリザベスの瞳の虹彩はバイオレット色である。虹彩はメラニン含有量によって左右され、メラニンの多いほど濃い黒色系に近づき、メラニンの少ないほど淡い青色系に近づくのだが、バイオレットはこの青と緑の中間に位置する色となる。バイオレットは全世界でも大変珍しい瞳の色とされている。世界的に活躍する多くの俳優、女優の中でも、このバイオレットを持ち合わせているのは彼女ぐらいである。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Elizabeth Taylor(IMDb、英語）