[鬼気迫る奇抜性、メリハリの利いた演技、カッコーやシャイニング]

ニューハリウッドの草分けとなった、デニス・ホッパー主演『イージーライダー』にて共演している俳優、それがジャック・ニコルソンである。『シャイニング』や『カッコーの巣の上で』で見られるような奇抜な役柄を、メリハリの利いた鬼気迫る表現力で軽々と演じきってみせる人物である。
1937年、アメリカのニューヨークにて生まれる。本名はジョーン・ジョセフ・ニコルソン。父はイタリア系、母はアイルランド系。両親は共に舞台芸人である。出生時、父が既婚者であった事から母フランシスが一時的に引き取るが、1939年、2歳、フランシスの両親の元へ預けられる。ジャックはこの祖父母を本当の両親、実母を歳の離れた姉であると信じさせられ、生活を続ける。1970年、33歳の頃、ジャーナリストがこの事実を暴くまで、ジャック本人はこの幼少時代の生い立ちを知る事はない。1952年、15歳、高校進学後から演劇に深い興味を覚え初め、演劇祭や関連行事などに積極的に参加。1955年、18歳、高校卒業後はハリウッドへ移住し、本格的に俳優を目指し始める。MGM社のアニメ製作、西部劇製作、テレビドラマ製作などで経験を積んだ後、1969年、32歳、デニス・ホッパー監督、主演の『イージーライダー』の主要登場人物役に抜擢され好演、アカデミー助演男優賞にノミネートされ、大きな注目を浴びる。続けて『ファイブ・イージー・ピーシーズ』、『さらば冬のかもめ』、『チャイナタウン』などでニューハリウッド作品のスター俳優としての地位を築き上げた後、1975年、38歳、精神病棟をテーマに据えたヒューマンドラマ傑作、『カッコーの巣の上で』に出演、アカデミー主演男優賞を受賞し、俳優としての地盤を確固たるものとする。以後、スタンリー・キューブリック監督『シャイニング』、『郵便配達夫は二度ベルを鳴らす』といったミステリックなサスペンス作品、ティム・バートン監督『バットマン』、『マーズ・アタック！』といったＳＦ作品、『恋愛小説家』、『アバウト・シュミット』、アダム・サンドラー共演『NY式ハッピーセラピー』、モーガン･フリーマン共演『最高の人生の見つけ方』といったヒューマンドラマ作品など、幅広いジャンルにおいて、癖のある奇抜な役柄を自然な形で演じ続けている。

1962年、25歳にて女優サンドラと結婚、1人の子どもをもうけるも、6年後の1968年、41歳にて破局。結婚はこの1度に留まるが女性遍歴は華やかで、『ファイブ・イージー・ピーシーズ』で共演した女優アンスバックとの間に隠し子が1人、1990年、53歳、モデルのレベッカとの間に2人の子どもがいる。20世紀美術品のコレクター。北米のプロバスケットリーグ、NBAのロサンゼルス・レイカーズのファン。後者に関しては熱烈なものであり、スタジアムの特等席に座って観覧している様子をテレビ中継にて確認する事が出来る。また、映画撮影時においても試合を見逃さず、時には携帯テレビで試合を確認しながら撮影に臨むこともある。

ちなみに、2004年にロンドン王立大学の研究チームが行ったユニークな調査に、「最も怖いホラー映画を選定する方程式の構築」といったものがあり、この調査の中で堂々の２１位に輝いた作品が、ジャック主演の『シャイニング』である。尚、この方程式を具体的に述べるに、【es = 緊張感を高める音楽 , u = 未知要素 , cs = 主人公らが追われるシーン ,t = 罠にハメられそうな予感 , (squared = 二乗) , s = 衝撃度 , tl = 現実味 , f = 虚構性, a = 主人公の孤独さ , dr = 暗闇かどうか ,fs = 映像の雰囲気 , n = 登場人物数 , sin = 血や内臓 , 1 = ステレオタイプ度】と仮定した上で、方程式 (es+u+cs+t) squared +s+ (tl+f)/2 + (a+dr+fs)/n + sin x – 1を計算し、その数値の高さでホラー映画の恐怖度を測定出来る――といったものらしい。どうやら、どこぞの島国の大学事情と同様に、英国の王立大学もよほど時間と予算と人手を持て余しているようだ。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Jack Nicolson (IMDb、英語）