[喜怒に富む表情と容姿、力強き演技と信念、ニュールンベルグやＯＫ牧場]

ヒトラー、ナチスの醜悪な歴史を締めくくる裁判を題材にした史実作品、ジュディ・ガーランド共演の『ニュールンベルグ裁判』に出演している俳優、それがバート・ランカスターである。喜怒に富んだ力強い表情と容姿、力強き演技と信念により、ヒューマンドラマに重厚感を加える人物である。
1913年、アメリカのニューヨークにて生まれる。本名はバート・ステファン・ランカスター。父は郵便局員、貧しい家柄。5人兄弟である。少年時代は家計を助ける為、靴磨きや新聞の売り子として働く。同時期、読書と映画に熱烈な興味を示し、特に冒険作品に出演していた名俳優、ルドルフ・バレンティノ、ダグラス・フェアバンクスらの大ファンとなる。1929歳、16歳、高校進学後はバスケットボール選手として活躍、1931年、１8歳、スポーツ選手として奨学金を獲得、ニューヨーク大学へ進学する。1933年、20歳にて中退、空中アロバティックのショーサーカス団に参加し、名物スターとして活躍する。1939年、26歳、怪我によりサーカス団を引退、その後はモデルやウェイターなど、職を転々とする。1942年、29歳、アメリカ海軍として従軍、慰問団の一員として、主にレビュアーとして戦線に赴く。1945年、32歳、終戦後、偶然知り合ったプロデューサーから勧められ、ブロードウェイの舞台役者として初舞台を踏む。翌1946年、33歳、ヘミングウェイ原作『殺人者』にて端役ながら見事な演技を披露せしめ、実力を認められる。冒険作品『真紅の盗賊』、デボラ・カー共演『地上より永遠に』、ゲーリー・クーパー共演の西部劇『ベラクルス』などで俳優としての地盤を固めた後、1955年、42歳、『マーティー』、翌1956年、43歳、『空中ブランコ』、翌1957年、44歳、『成功の甘き香り』などで主演と共に監督、脚本、製作を手掛け、総合的な映画人として脚光を浴びるに至る。以後、オードリー・ヘプバーン共演の西部劇『許されざる者』、ジュディ・ガーランド共演『ニュールンベルグ裁判』、ルキーノ・ヴィスコンティ監督『山猫』、ベルナルド・ベルトルッチ監督、ロバート・デ・ニーロ主演『1900年』など、史実的、情緒的なヒューマンドラマ名作品への出演を続けた。1994年、81歳にて永眠する。

3度の結婚暦がある。2回目は1946年、33歳、ノーマと結婚しており、彼女の連れ子を合わせ、5人の子どもを持つ。ノーマとは23年後の1969年、56歳にて破局した。寛容な精神に基づいた政治理念を持ち、人種差別撤廃、反ベトナム戦争、同性愛者権利擁護など、弱き者たちを支援する活動へ積極的に参加をした。

ちなみに、ニュールンベルグ裁判、そして東京裁判は、第二次世界大戦を裁く二大国際軍事裁判であるが、特にニュールンベルグ裁判には悪逆非道の限りを指令し続けたナチス高官が一同に介しているという事もあり、被告人に対しては殴打、足蹴などの暴力、独房への拘禁に始まり、保障の無い無罪を条件にちらつかせたり、食料を与えなかったりと、数々の不道徳な尋問が行われたと言われている。この尋問における倫理観の問題提起は否めない。が、自業自得であるとも、言わば「ざまあみろ」とも、表現出来る。その判断は、各個人に、各社会に、そして時間に、委ねるより他にない。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Burt Lancaster(IMDb、英語）