OKIは、次世代の光通信の高速化技術として有望視されつつも実用化が困難といわれてきた、コヒーレント光通信向け光位相同期技術の開発に成功したことを発表した。
開発は、同技術を採用して試作した毎秒40ギガビットの受信機にて行われ、世界で初めて2値位相変調信号の安定したコヒーレント受信を実現した。
同技術では、光信号を電気信号に変換する必要がないため、デジタルコヒーレント受信方式と比較して、受信機の消費電力を約1/10に削減できるほか、ネットワークの遅延も減少するといわれている。
今回OKIは、これまで、実用化の阻害要因となっていた光位相変調信号及び局部発振光の周波数不安定性を克服する手段として、光注入モード同期半導体レーザを局部発振器として用いた。
光注入モード同期半導体レーザは、外部より入力した光信号と同一の周波数を有する光信号を出力する特性がある。これを応用することにより、光位相変調信号と局部発振器の搬送波周波数を常に一致させることが可能になり、周波数変動に影響されない堅牢な復調処理を実現した。
さらに、非線形システム理論に基づく新たな設計手法を導入することにより、各構成電気デバイスの性能を十分に活かしきることが可能となり、電気デバイス選択の自由度が広がったという。
コヒーレント光通信とは、送信側と受信側で位相を正確に合わせ、一度の変化で複数のビットを伝えることを可能とするもの。コヒーレント通信自体は、無線通信の分野ではすでに広く使われている方法だが、無線通信で利用される電波に比べ、圧倒的に速い光の場合、位相の制御が困難といわれている。
デジタルコヒーレントとは、高速デジタル信号処理で位相のずれを計算で推定し、補正するという方法のこと。
光通信の高速化については、今年の3月に、独立行政法人情報通信研究機構により、「必要最小限の受信信号から光位相を推定する」技術が開発されているが、今回はまた別のアプローチでの取り組み。「0」か「1」かのデジタルの世界は、実用面での波及スピードを追い越せるのだろうか。
OKIリリース