[揺るぎ無き、妥協無き男、アクションを演じ史劇を撮る、リーサルやパッション]

ベン・キングスレーが『ラッキーナンバー7』にて共演したルーシー・リューが、復讐劇のアクション作品『ペイバック』にて共演した俳優、それがメル・ギブソンである。揺るぎ無き、妥協無き男を演ずるに優れ、また自ら監督として当時の世界観を見事に反映した史劇を描く人物だ。
1956年、アメリカのニューヨーク生まれ。本名はメル・コラムセル・ジェラルド・ギブソン。アイルランド系、父は事業家。祖母が著名なソプラノ歌手エヴァ・マイロット。11人兄弟の6番目。事業で大成功を遂げていた父であったが、ベトナム戦争の経済混乱を受ける形で、失墜。1968年、12歳、一家でオーストラリアへ移住する。1974年、18歳、大学進学後は演劇への興味を抱き、1977年、21歳、卒業の後に演劇学校へ入学、これより本格的に舞台や映画への出演を始め、演劇の経験を積む。翌1979年、23歳、オーストラリア映画のアクション作品『マッドマックス』にて好演、これによりアクション俳優として大きな脚光を浴びる。1982年、26歳よりアメリカに活動の幅を広げ、『ザ・リバー』、『燃え尽きるあで』、航海史上、最も有名な事件のひとつ、18世紀のイギリス海軍で起きたバウンティ号の反乱をモチーフにした『バウンティ/愛と反乱の航海』などへ出演した後、1987年、31歳、2人の刑事が織り成すアクション傑作『リーサル・ウェポン』にて好演、同作品の成功により映画俳優としての地盤を固める。1993年、37歳、『顔のない天使』より映画監督としての活動も始め、1995年、39歳、13世紀末、スコットランド独立に大きく貢献したウィリアム・ウォレスの伝記的作品『ブレイブハート』を主演、監督し、同作品はアカデミー監督賞を受賞するに至る。以後、『リーサル・ウェポン』シリーズ、ゲイリー・シニーズ共演『身代金』、『ペイバック』といったアクション作品、ヘレナ・ハント共演『ハート・オブ・ウーマン』、ミラ・ジョヴォヴィッチ共演『ミリオンダラー・ホテル』といったヒューマンドラマ作品へ出演する他、イエス・キリストの断罪場面の忠実な再現を試みた『パッション』、マヤ文明をモチーフとした『アポカリプト』など、綿密に舞台、衣装、小道具描写を行った歴史スペクタクル傑作を描く監督として、その活躍を続けている。

1979年、23歳にてロビーと結婚、7人の子どもをもうけるも、30年後の2009年、53歳にえ破局。同年、2ヵ月後、ロシア人モデルのオクサナとの間に子どもをもうけるも、直後に破局。オクサナはメルから暴行を受けたと訴えを起こし、2010年10月現在も同裁判は進行中。双極性障害、いわゆる躁うつ病を患っていると言われており、ユダヤ人に対する差別発言、暴行などが問題として取り上げられた事がある。思想の面では少々極端とも言える厳格なカトリック主義であり、女性の純潔、避妊や妊娠中絶の反対などを主張している。自宅近くの丘にはカトリック教会が立っているが、これはメルの全出資により建設されたもの。

ちなみに、『マッドマックス』の主演に抜擢された事により俳優としてのキャリアを方向付けたメルであるが、同作品のオーディションの直前に友人と大喧嘩をし、そのまま所々に綻びを作った汚らしい格好で監督の前に姿を現したという。監督がメルの豪快とも粗雑とも取れるこの気質を気に入り、彼を選んだ。それ自体演技とも取れなくもないが、おそらく彼の場合は、地であろう。と、筆者は感ずる。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
<a href=" http://www.imdb.com/name/nm0000154" target="_blank">Mel Gibson (IMDb、英語）</a>