[即興的な真実味と溢れる重厚感、フランス愛するイタリア人、1900年や溥儀帝]

ピーター・オトゥール出演、中国清代最後の皇帝、愛新覚羅溥儀を描く史実作品『ラスト・エンペラー』を描いた監督、それがベルナルド・ベルトルッチである。リアリティに富んだ、重厚感溢れる描写の秀逸な人物である。イタリア人であるが、ヌーヴェルヴァーグ時代のフランス人監督の描写手法に心酔しており、確かに作品の端々にはそれらしい、即興的、過激的な現実描写が垣間見られる。ヌーヴェルヴァーグとは、英語で言う所のNew Wave《新しい波》。1950年頃から20年ほど続いた、フランスの映画製作の一傾向である。
1941年、イタリアのパルマにて生まれる。父は美術評論家、映画評論家、母は教師。兄がいる。学芸の教養に富んだ家庭の中で、ベルナルドも創作の世界に興味を惹かれて行く。1956年、15歳、小説を執筆。学術界に顔の利く父アットーリオの助けもあり、同作品はすぐに出版。高評価を得て、多くの賞を受賞。1959年、18歳、再びアットーリオを通じて映画製作の脚本家として携わる事となり、その後は映画製作の技術を磨く。1962年、21歳、『殺し』にて映画初監督を果たし、注目される。『革命前夜』、『暗殺のオペラ』、『暗殺の森』と、甘美な情緒が漂うドラマ作品を描いた後、1972年、32歳、マーロン・ブランｊンド主演『ラストタンゴ・イン・パリ』を製作。ベルトルッチらしい甘美さ極まった作品と言えるが、一方、性描写のあまりの過激さが手伝って、多くの映画館で発禁に処せられるに至る。『スターシップ・トゥルーパーズ』や『インビジブル』といったSF作品を描くポール・バーホーベン監督の『ショーガール』よろしく、ポルノ描写を一種の芸術とみなすのは結構であるが、物語をぶち壊すような過度の描写は控えるべきである。さて、イタリア激動の20世紀を描いた、ロバート・デ・ニーロ主演『1900年』、『ルナ』、『ある愚か者の悲劇』の後、1987年、47歳、『ラストエンペラー』を製作。規約の厳しい中国政府の全面協力もあり、台詞は英語ながら真摯な史劇傑作に仕上がった同作品は世界的な支持を受け、アカデミー賞9部門を制覇、映画監督としての地盤を固める。以後は、同じく東洋を舞台にした『シェルタリング・スカイ』、『リトル・ブッダ』、恋愛を絡めたヒューマンドラマ『シャンドライの恋』、『ドリーマーズ』といった作品を製作している。エンターテイメント性はあまり高くないが、真摯な描写に富んだ物語を描き続けている。

2度　の結婚暦があり、1990年、50歳、脚本家のクラレと結婚し、現在に至る。ジャン＝リュック・ゴダールを始めとするヌーヴェルヴァーグのフランス人映画監督に心酔。同胞のイタリア人映画監督としては、ロベルト・ロッセリーニ、ピエル・パオロ・パゾリーニの実力を認めている。

ちなみに、中国の北京にある明清朝の旧王宮、紫禁城は、『ラストエンペラー』まで一度も映画ロケ地として許可された事がなかった場所である。中華気風がぎゅっと凝縮された絢爛な遺産建築であり、場所は天安門広場駅すぐ側。紫禁城内にあった数々の芸術品は、1960年頃から中国国内に広がった文化大革命の機運に飲まれて一部が破壊されたものの、まだまだ膨大な量が所蔵されている。また、その一部は文化大革命の難を逃れ、台湾の故宮博物館に所蔵されている。



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Bernardo Bertolucci (IMDb、英語）