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スポーツ･コメディ作品の傑作『メジャー・リーグ』を模したような幼稚な邦題であるが、女性たちの活き活きとした野球ドラマを描いている作品が、『プリティ・リーグ』である。原題は「A League of Their Own《彼女たちの野球、ぐらいの意》」。ティア・レオーニやマドンナといった女性選手たちを取りまとめる男を演じている人物が、安定感のある晴れやかな演技をこなし続ける名優、トム・ハンクスである。
1956年、アメリカのカリフォルニアにて生まれる。本名はトーマス・ジェフリー・ハンクス。3人の兄弟がいたが、1961年、5歳の頃、両親の離婚によって彼らと別れる。以後、彼の言葉を借りれば”混沌とした家族”だったとの事で。父は結婚、離婚を繰り返し、その度にトーマスには義兄弟が出来ていった。が、生活そのものは至って健康的であり、酒も煙草もやらない珍しいぐらいの模範家庭であったらしく、こうした目まぐるしい矛盾性は当時のトーマス少年を悩ませ、彼をひどく人見知りする性質の子どもにしていたらしい。

転機となったのは、この陰気な少年が演劇に興味を持ち始めてから。高校に入ると、地元劇団の舞台で活躍するようになり、1973年、17歳、カリフォルニア州立大学の演劇専攻へ進学する。1975年、19歳、うまが合わず同大学を中退。この時に彼の俳優的才能を認めていたシェイクスピア劇団の演出家のつてを頼って、ニューヨークへ移住。ここで若手のコメディアンとしてお馴染みのテレビ番組『サタデーナイトライブ』や小劇場での経験を重ねた後、1980年、24歳、『血塗られた花嫁』にて映画初出演。ここでコメディ俳優として注目された彼は、『スプラッシュ』、『マネー・ピット』、『ビッグ』など、良作のコメディ作品に次々と登場し、キャリアを重ねる。1993年、37歳、メグ・ライアンと共演したラブ・コメディ『めぐり逢えたら』でシリアスな演技も認められると、『フィラデルフィア』、『フォレストガンプ/一期一会』といったヒューマンドラマの傑作作品で主演を演じ、なんとこの2作品で2年連続のアカデミー賞男優賞を受賞する。

こうして俳優として不動の地位を築いた後は、『プライベート・ライアン』、『グリーンマイル』、『キャスト・アウェイ』、『ターミナル』などの傑作に出演する。『すべてをあなたに』で監督をこなしたり、『エンバー　失われた光の物語』など製作で関わったりする事もある。『トイ・ストーリー』シリーズのウッディ保安官役の声優としても有名だ。これらの作品における彼の存在感は驚くほど安定感がある。近年では世界的なミステリー作家、ダン・ブラウン著の『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの主人公、ラングドン教授の役も好演している。2012年、同シリーズの『ロスト・シンボル』が公開予定である。

1977年、21歳、サマンサという女性の間に子供が生まれ、年が明けてから彼女と結婚。この子供というのがコリン・ハンクス。現在33歳、彼もまた『キング・コング』、『テネイシャスＤ』、『ブッシュ』などに出演し、着実なキャリアを重ねている俳優である。サマンサとの間には娘も生まれるが、1987年、31歳の頃に離婚。1988年、32歳、女優のリタ・ウィルソンと結婚し、今に至る。

ちなみに、第16代アメリカ合衆国大統領、エブラハム・リンカーンの母親の名前はナンシー・ハンクス。直系ではないのだが、トム･ハンクスはリンカーン大統領の遠縁に当たる。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Tom Hanks（IMDb、英語）