[ベンもローマも最良も、華麗に描かれし珠玉のドラマたち]

チャールトン・ヘストン主演、キリストの生きていた時代、古代ローマ帝国における友情と運命の物語を描く『ベン・ハー』を監督した人物、それがウィリアム・ワイラーである。1930年代から30数年間は俗にハリウッド黄金時代と呼ばれているが、彼はまさにこの時代を描き出した華麗なる映画職人であると言えよう。巧みな人物描写、分かりやすく勢いのある物語が、我々を魅了する。
1902年、フランスのアルザスにて生まれる。2人兄弟の弟。両親はユダヤ系、雑貨店の経営者である。母の従弟にユニバーサル・スタジオの創始者の1人であるカール・レムリがいる。少年時代からコンサート、オペラ、舞台、映画をこよなく愛していた。週末になると友人たちと一緒に素人劇を演じて遊んでいたとの事である。1918年、16歳、高校卒業後、先述のユニバーサル・スタジオの役員カールのつてを頼りアメリカへ移住、下働きとして地道に経験を積む。1925年、23歳、ユニバーサル史上最年少にて短編西部劇作品の初監督を果たした後、『孔雀婦人』、『黒蘭の女』、『嵐が丘』といった傑作文芸映画作品を製作し、映画監督としての地盤を確固たる物にする。以後、『ミニヴァー夫人』、『我等の生涯の最良の年』、『ベン・ハー』といった見事なヒューマンドラマ作品を描く。一方でコメディタッチの作品の描写もこれまた見事であり、中でも『ローマの休日』は世界的な大成功を収めた。これは若手女優であったオードリー・ヘプバーンを世に送り出す契機となった作品でもある。『ベン・ハー』のアカデミー賞１1部門受賞を始めとして、それぞれの作品において輝かしい映画賞の受賞暦がある。アカデミー監督賞は12回ノミネートされ、3度の受賞を果たしている。後者の記録は未だに破られていない。1981年、79歳、永眠。

1934年、32歳にてマーガレット・タリチェットと結婚するも、2年後の1936年、34歳にて破局。1938年、36歳、マーガレット・サラヴァンと結婚、5人の子どもをもうけて生涯を共にした。

ちなみに、作品に対して徹底した完璧主義を貫き通す彼は、時に90回も同じシーンを撮り直す事があったらしい。その為、仲間内からは「Ninety Take Wyle《90回撮り直しワイラー》」という冗談を交えた呼び名を付けられていたとの事。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
William Wyler (IMDb、英語）