エドワード・ノートン(1969~)
独立不羈の存在を保ち周囲の人びとと共存しようと努力するよりも、同じ物を心酔する人びとが徒党を組み、自分たちの考え方や行動に属さない人びとを攻撃する方がよっぽど楽である――というのが、悲しいかな、歴史上の多くの人間の性と言える。確固たる崇拝への憧れは質の低い人間たちを引き寄せる。今も尚、ネオナチという形でヒトラーやナチスを愛する人びとが存在するの事は返す返す残念だ。
さて、そんなネオナチというテーマを大々的に取り扱った傑作が、『アメリカンヒストリーX』である。アメリカにおける熱烈な白人至上主義者の若者が更正する、という難解な役を見事に演じきった主演俳優、それがエドワード・ノートンだ。リチャード・ギア主演『真実の行方』、ブラッド・ピット主演『ファイト・クラブ』などでも二面性のある狂気的な役を演じ、その存在感は主役を飲み込まんばかりである。
1969年、アメリカのボストンに生まれる。本名はエドワード・ハリソン・ノートン。父は弁護士、祖父は建築家。3人兄弟の長男である。1987年、18歳にてイェール大学に進学し、天文学や美術などを学びながら、一方で興味のあった演劇を始める。同大学では日本語も学んでおり、日常会話程度は話せるとの事。1991年、22歳、卒業後は祖父の仕事を手伝う形で日本へ渡る。同年ニューヨークへ移住、ここから本格的に演劇の世界に入る。アルバイトを傍らに舞台俳優として活動。次第にエドワードの演技能力が高く評価され始めると、1996年、27歳、当時既に有名であったレオナルド・ディカプリオを退け『真実の行方』にアーロン役で出演、見事な演技を評価され一躍名が知れ渡るようになる。以後、『世界がアイ・ラヴ・ユー』、『アメリカンヒストリーX』、『ファイト・クラブ』、『25時』、『幻影師アイゼンハイム』など、難しい役を演じ切ながら今に至る。2000年、31歳、『僕たちのアナ・バナナ』では出演と共に監督、製作もこなしている。
結婚につながるような大きな恋愛が2度ほどあった様子であるが、結婚には至っていない。落ち着いた性格ではあるが芸術に対しては完璧さを求める傾向にあるらしく、撮影の際に監督と対立する事もある。『アメリカン・ヒストリーX』ではとうとう最後までトニー・ケイ監督の編集方法に納得出来ず、自分で編集をしてしまった。
ちなみに、先述の通り我々の日本に親しみのある男であるが、父が環境保護を推進する弁護士である為か環境保護団体の過激派シーシェパードを支持している。冒頭のナチズムとは言わないまでも、多様な食文化を徹底的、武力的に排斥する彼らの行為は、ほとんど歴史の醜悪な部分の繰り返しである。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Edward Norton (Wikipedia、英語)