[屹然とした、予断を許さぬ厳しい演技、シネマのファーストレディ]

ルイーザ・メイ・オルコット原作の自伝的な物語、19世紀後半のアメリカを舞台にした『若草物語』は、今までに何度も映画やテレビドラマで映像化されている名作である。最も新しい映画作品としては1994年のものであり、同作品にはウィノナ・ライダー、キルステン・ダンスト、クリスチャン・ベイルら、後に人気を博する若手俳優たちが出演をしている。それより61年前、1933年に製作された『若草物語』にて主演を果たしている人物、それがキャサリン・ヘプバーンである。屹然とした厳しい性格がそのまま力強い演技として現れており、物語の中で堂々たる支柱を成した。頼れる力強き女優として、「シネマのファーストレディ」の愛称が付けられている。
1907年、アメリカのコネチカットにて生まれる。本名はキャサリン・ホートン・ヘプバーン。オードリー・ヘプバーンと同姓であるが、血縁関係はまったく無い。父は医師、母は婦人参政権運動の活動者。スコットランド、イギリスの血統。4人の兄妹がいる。幼少時代は知識階級の令嬢として、水泳、乗馬、ゴルフ、テニス、スケートなどのスポーツに勤しむが、次第に演技への魅力に惹かれる。1925年、18歳、大学へ進学し心理学を学ぶ一方、演技の勉学も重ねる。1929年、22歳、大学卒業後は舞台俳優として女優のキャリアを重ね、1932年、25歳にて映画初出演を果たし、注目される。以後、『若草物語』、ケイリー・グラント共演『赤ちゃん教育』、ケイリー・グラント、ジェームス・スチュワート共演の『フィラデルフィア物語』、ハンフリー・ボガード共演『アフリカの女王』、ピーター・オトゥール共演『冬のライオン』、ヘンリー・フォンダ共演『黄昏』など、名作と評される数々のヒューマンドラマ作品での好演を続け、1994年、87歳にて引退。2003年、96歳、老衰により永眠した。

1941年、34歳、コメディタッチのドラマ作品『女性No.1』にて共演したスペンサー・トレイシーと恋仲に発展した。スペンサーは既婚者であったので結婚はしなかったが、生涯、彼らは親密なパートナーとして時間を共有した。気難しく誇り高い、荒い気性の持ち主。1959年、52歳、1959年、52『去年の夏　突然に』の撮影終了後、『イヴの総て』でアカデミー監督賞を受賞している巨匠、ジョセフ・Ｌ・マンキヴィッツに唾を吐きかけたり、インタビューを受ける際にはセットに文句を付けたり――と、そんな逸話が幾つも残っている。

ちなみに、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の『アビエイター』にはキャサリン・ヘプバーンが登場しているが、この役を演じているのがケイト・ブランシェットである。『エリザベス』のエリザベス1世女王役、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのガラドリエル役などで毅然たる好演をする女優であるが、なるほど、素晴らしいキャスティングである。彼女は同作品にてアカデミー助演女優賞を受賞した。また余談であるが、ケイトは宮崎駿監督のアニメ映画『崖の上のポニョ』のアメリカ版にて、ポニョの母親、グランマンマーレの声を演じている。



ムービーデータベース（IMDb、英語）
Katharine Hepburn (IMDb、英語）