スティーブン・セガール(1952~)
明治時代初期、日本江戸文化の終わりを象徴する侍の生き様を描いた『ラストサムライ』に対し、キャスティングの不満を嘆いた男、それがスティーブン・セガールである。武道に精通し、流暢な大阪弁を話し、渡辺謙と同じく日本の球団、阪神タイガースを愛するこの俳優としては、侍として自らが出演したかった所であろう。それにして彼の演ずるキャラクターは、兎にも角にも強い。不死身である。お陰でファンたちからは「セガールは足を使わずにサッカーが出来る」だの、「セガールは電卓でウィンドウズ7を起動させる事が出来る」だのと、不可能染みた最強を示す珍妙なジョークが飛び交っている。
1952年、アメリカのミシガンにて生まれる。父はユダヤ系の数学教授、母はアイルランド系の調剤士である。1957年、5歳、カリフォルニアに移住。1959年、7歳、格闘技の魅力を覚え、本格的な取り組みを始める。1970年、18歳、高校卒業後、ニューメキシコ、日本に渡り、英語教師の仕事と並行しながら各種格闘の技術を磨き続ける。1983年、31歳、ハリウッドへ移住。映画の武術指導者としての仕事を始める。尚、ショーン・コネリー主演の007シリーズ番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』ではコネリーの武術指導に当たっているが、あまりに熱が入り、コネリーの手首を骨折させてしまっている。地道にキャリアを重ねた後、1987年、35歳、『刑事ニコ』にて映画初主演を果たす。以後、完全懲悪、無敵のヒーローという一貫したキャタクラーとして、『沈黙の戦艦』、『グリマーマン』、『DENGEKI 電撃』など、数々のアクション映画への出演。2002年、50歳、『DAKKAN 奪還-アルカトラズ-』以降は目立つ仕事を控えていた彼であるが、2010年現在、ロバート・ロドリゲス監督のアクション大作『マチェーテ』の麻薬王役として登場予定である。同作品のアメリカ公開日は2010年9月3日の予定。日本公開日は未定。
1974年、22歳合気道道場長の娘、美也子と結婚し2人をもうけるも、10年後の1984年、32歳にて女優アドリエーンと結婚し日米重婚の状態に発展。アドリエーンは同年に破局。美也子とは1987年、35歳にて破局。同年、『ハード・トゥ・キル』の共演者、女優ケリーと結婚、3人の子どもをもうけるも、13年後の1996年、48歳にて破局した。禅、合気道、剣道、空手、柔道、柔術、ナイフ格闘術、各種中国拳法に精通。作品内の愛用拳銃は軍用拳銃として名高いM1911、コルト・ガバメント。影響を受けた俳優は『七人の侍』にて怒涛の名演技を魅せた三船敏郎、志村喬。ギターが上手い。1892年、明治25年に設立された日本の亜仏教宗派、大本教に入信している。他、チベット仏教への造形が深い。ジャッキー・チェンとは彼が無名時代からの武道仲間である。
ちなみに、いつの間にか日本の各配給会社の暗黙の了解で、セガール作品のタイトルには『沈黙の』という頭文句を入れようお約束が存在しているが、これはあくまで日本独自の手法であり、続編を示している訳では無い。作品はそれぞれ独立しており、原題はまるで別のタイトルである。が、その一方で奇妙な事には、『沈黙の戦艦』 の続編作品の題名は『暴走特急』である。この数少ない続編作品こそ、『沈黙の戦艦2』とすべき所であるのだが――。たかが題名、されど題名。妙な遊び心を発揮せしめ我々を混乱させる事は出来る限り避けて欲しいものだ。
ムービーデータベース(IMDb、英語)Steven Segal (IMDb、英語)